2016年12月30日金曜日

よく生きる通信 Vol.27 「人生には季節がある」


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         ★よく生きる通信 vol.27★
           2016年12月号(特別号)
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

今年も残すところ、あと1日となりましたが、皆さまいかがお過ごし
でしょうか?

さて、今月の19日に、よく生きる研究所はおかげさまで設立から
4周年を無事迎えることができました。これもひとえに皆様のご支援
の賜物と心から感謝しております。

この間、「天職創造セミナー」および「アクティブ・ホープ・
ワークショップ」の開催を中心に活動してきましたが、4年が経った
このタイミングでよく生きる研究所としての外向きの活動を当面
休止させていただくことになりました。それに伴い、この「よく
生きる通信」もしばらくの間休刊となります。

いささか唐突に感じられると思いますが、実はこのことは半年ほど
前から決めていました。その理由および今後どうするのかについて
は、「よく生きるコラム」の方で今回のテーマと関連づけながら、
少し触れさせていただきたいと思います。

では、当面最後となる「よく生きる通信」特別号をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「人生には季節がある」
2.よく生きるリソース:「ライフ・シフト」リンダ・グラットン/
アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)
3.編集後記

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1.よく生きるコラム 「人生には季節がある」

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私は人生には「季節」があると考えています。何か新しいことが
始まりそうな予感に包まれ、いろいろなことを試してみる「春」。
そして、その中から「これ」というものが立ち現われ、そこに
全精力を傾け、忙しく動き回る「夏」。そうした努力の成果が実を
結ぶと同時に、現状を見直さざるを得ない何かが起こり、内省的
になる「秋」。その中から湧いてきた問いと深く向き合い、大切な
ものを手放して、次なるサイクルに備えて自分をひたすら整える
「冬」。私の場合、これまでの人生を振り返ると、このサイクルを
ほぼ10年周期で繰り返してきた感があります。

20代の後半でそれまで勤めていた会社を辞め、アメリカに留学した
のが冬。「どうしたら人は生き生きと仕事ができるのか?」という
問いを持つ中で生まれたのが「天職創造セミナー」であり、その
実現をサポートする方法として出会ったのがコーチングでした。
日本に帰国し、個人事業主として天職創造セミナーにコーチング
を加えたサービスを細々と提供していたのが春。そして、コーチ
ングについて書いた本が予想外に売れたことが発端となり、自分が
学んだCTIのコーチング・プログラムを日本で提供すべく会社を
設立し、その活動に明け暮れたのが夏。無理がたたったのか病気に
なり、それがきっかけで乗ったピースボートで世界の現状を知り、
そうしたことにまったく無頓着だった自分に危機感を抱いたのが秋。
その結果、30代の終盤に会社の経営を手放し、「どうしたら持続
可能な社会がつくれるのか?」という問いを持って、イギリスの
フィンドホーンというエコビレッジに移住したのが、また冬。その
結果、チェンジ・ザ・ドリームやトランジション・タウンという
持続可能な社会をつくるための活動に出会い、それを日本に紹介
することになるわけです。

そして今、また季節が一巡りして、新たな冬に突入しようとして
います。なんとなく去年くらいからその予感がしていたので、少し
ずつこれまでやってきたことを手放しながら、その準備をしてきま
した。昨年には15年にわたって株主として関わってきた会社を
完全に手放し、今年は天職創造セミナーとアクティブ・ホープ・
ワークショップを含むほぼすべての活動を年内で一旦完了しました。
そして、来年から何をするのかと言えば、今自分の中にある新たな
問いを持ってしばらく探求の旅に出ようと思っています。その問い
というのは、「どうしたら革命は起きるのか?」というものです。
この問いがどこから出てきたのかをきちんと説明しようとすると
かなりの長文になってしまいそうなので割愛しますが、簡潔に
言うと、これまで自分が関わってきたものを含め、今求められて
いる社会変革がよりスピーディかつより大きなスケールで拡がって
いくためには何が必要なのかということについて探求したいという
想いがあります。

そのために、まずはとっかかりとして、来年の前半はここ1~2年
の間に個人的な関わりがますます増えてきている中国に身を置いて、
中国語の勉強をしながら、近年急速に世界におけるプレゼンスを
高めつつある彼の国の今を肌で感じるところから始めたいと思って
います。そして、来年の後半はそのまま中国に残るか、場合に
よってはアメリカの大学院に籍を置き、社会変革について学ぶ
という選択肢も視野に入れています。その先にどんな「春」が
待っているのか、現時点ではわかりませんが、これまでの経験を
振り返っても、人生の季節に逆らうことなく、逆にどっぷりと
それに浸かった方が次のサイクルがより充実したものになるような
気がしているので、しばらくは急いで春に移行しようとせず、
冬ごもりに徹しようと思っています。

さて、あなたの人生は今、どのような季節にあるのでしょうか?
(榎本 英剛)

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2.よく生きるリソース 「ライフ・シフト」
リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)

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本書の著者の一人は以前このメルマガのVol.10の「よく生きる
リソース」で取り上げた『ワーク・シフト』という本と同じリンダ・
グラットン氏。前著は今から約20年後における仕事の世界がどう
なっているかについて複数のシナリオを提示することで今後の
キャリアをどう主体的に築いていくかを考えさせるという内容
でしたが、本書は寿命が近い将来100歳を超えると予測されている
時代において、仕事を含めて人生全体をどのようにデザインすべき
かを、世代が異なる3人のシナリオを通して考えさせる内容になって
います。

本書の中で著者たちは、寿命が100歳を超える「100年ライフ」に
おいては、従来のような教育・仕事・引退からなる「3ステージの
モデル」は非現実的になりつつあり、それらに加えて様々な可能性
を模索する「エクスプローラー」のステージ、自由と柔軟性を
重んじて小さなビジネスを起こす「インデペンデント・プロデュー
サー」のステージ、そして複数の仕事や活動に同時並行的に関わる
「ポートフォリオ・ワーカー」のステージが出現し、しかも個人の
志向や特性に合わせてそれらのステージを順不同で組み合わせる
「マルチステージ」の時代がやってくるだろうと主張しています。

この主張は私自身のこれまでの人生を振り返ってみても納得のいく
もので、決して寿命が100歳になることを見越してそうしたわけ
ではないものの、自分が心から望む働き方・生き方をしてきたこと
が結果として「エクスプローラー」「インデペンデント・プロ
デューサー」「ポートフォリオ・ワーカー」を含むマルチステージ
からなるキャリアになったという感じがします。そういう意味では、
本書が主張するマルチステージのキャリアというのは、100年
ライフに対応するためだけでなく、自分が幸せになるためにも
有効な考え方ではないかという気がします。

また、本書のもう1つ大事な主張として、100年ライフにおいては、
お金などの有形の資産をどうするかもさることながら、スキルや
知識などの「生産性資産」、健康や家族関係などの「活力資産」、
そして自己意識や開かれた姿勢などの「変身資産」の3つに著者
たちが分類している「無形の資産」をどうするかが非常に大事に
なってくるということがあります。そして、これらの無形資産を
充実させるために、時には意図的に「移行期間」を設け、いわゆる
仕事をまったくしない時期も必要になるのではないかと述べて
います。

今号のよく生きるコラムでも紹介したように、私はこれまでに何度
かこの移行期間を経験してきました。そして、その度に新たな知識
やスキルという生産性資産を手にし、それによって仕事や活動の
多様性も拡大してきました。そして今また新たな移行期間に意図的
に突入しようとしているこのタイミングで本書に出会えたことは
心理的に大きな後押しになりました。この年末年始にどんな本を
読もうかと迷っている人にはぜひお勧めの一冊です。

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3.編集後記

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2013年の10月に第1号を発刊して以来、不定期の発行ながら今号
で27号を数えるまで約3年にわたって続けてきたこの「よく生きる
通信」。ここまで続けられたのも、ひとえに皆様という読者がいて
くださったからこそと心から感謝しています。

一旦休止とさせてはいただきますが、いずれまた再刊したいと
思っていますので、ぜひご登録いただいたままにしておいていただ
ければ幸いです。では、じばらくお暇をいただきますが、今後とも
どうぞよろしくお願いいたします!

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
いただいた方にお送りしています。

※この通信のバックナンバーをご覧になりたい方は、以下のリンク
からご覧いただくことができます。
http://yokuikiru-kenkyusho.blogspot.jp/

なお、万が一このようなメルマガが送られてくるお心当たりがない方、
あるいは心当たりはあるが購読を希望しないという方は、恐れ入り
ますが、以下のリンクをクリックして購読を解除していただければ
幸いです。
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2016年9月23日金曜日

よく生きる通信Vol.26 「心の動くところに人生の目的あり」

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         ★よく生きる通信 vol.26★
           2016年9月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

私は先月、家族旅行でアフリカのタンザニアに行ってきました。
大の動物好きである妻と娘に野生の動物を見せてあげたいという
のがその大きな理由でしたが、サファリ・ツアーで次々と現れる
動物を見て一番はしゃいでいたのは私だったような気がします。

大自然の中で自分の力で生きている動物たちは、やはり動物園や
サファリ・パークで人間に飼い慣らされている動物たちと違って
たくましく、「命の力」に満ち溢れていて、感動しました。

では、「よく生きる通信」Vol.26をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「心の動くところに人生の目的あり」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/10/8-10 アクティブ・ホープ・ワークショップ
(長野・女神山)
・2016/10/2 トークイベント:本当の仕事とは?(東京・六本木)
・2016/10/13 20代に考えておきたい、自分に嘘をつかない生き方・
 働き方(東京・千代田)
・2016/10/15 藤野の学校(神奈川・藤野)
・2016/10/17 どんなときにも希望を失わない生き方 ACTIVE HOPE
 (東京・後楽園)
・2016/11/19-20 天職創造セミナー(藤野・無形の家)
・2016/12/10-11 天職創造セミナー(藤野・無形の家)
3.よく生きるリソース:「人生の目的」本田健著(大和書房)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「心の動くところに人生の目的あり」

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人生の目的。それは、なぜ自分がこの世に生まれ、何のために今
こうして生きているのか、ということ。私は、究極的に人が心の底
で求めているのは、この問いに対する答えなのではないかと思って
います。「人は意味を求める動物である」と著名な心理学者であり、
精神科医でもあるヴィクトール・フランクルはかつて言いました。
もしそうであるなら、人がもっとも見出したい意味は自分の人生
ではないか、そう思うわけです。

残念ながら、それは数学の問題のように、どこかに正解が書かれて
いるわけではありません。一人ひとりが自分でその答えを見出して
いくしかないのです。前回のメルマガで取り上げたように、現代を
生きる多くの人は、こうした答えのない問いとともにいることが
できず、すぐに答えを求めようとする傾向があります。したがって、
たとえそれが「自分は何のために生きるのか?」というような
大事な問いであっても、ちょっと考えて答えが出ないとすぐに
あきらめてしまったりします。でも、私は、この問いは一生を
かけて問うものであり、それだけの価値があると考えています。
そして、いずれこの世を去る時、「ああ、自分はこのために生き
たんだな」と思えるものがあれば、仮にそれが苦労の絶えない人生
であったとしても、その人は幸せな人生を生きた、よく生きたと
言えるのではないかと思うのです。

正解がなく、一生かけて問うものだとは言っても、つねに「仮説」
を立てることはできます。そして、実はこの仮説を立てるという
のが、とても大切なのです。仮に「これが自分の人生の目的だ!」
と思っても、正解がない以上、それは結局つねに仮説でしかない
わけで、でも「自分の人生はこのためにある」と感じるものがある
ことが日々の生活を充実させ、何かの選択を迫られた時の基準を
明確にし、その目的を生きるのに必要なものを引き寄せ、豊かな
人生を生きることを可能にしてくれるのです。

では、どうしたら、たとえそれが仮説であったとしても、自分に
とってピンとくる人生の目的を見出すことができるのでしょうか?
人生の目的の見つけ方にはいろいろな方法がありますが、今回の
コラムで紹介したいのは、自分の心が動くことに注意を向ける
という方法です。「心が動く」というのは、別の言い方をすれば、
何らかの感情が湧いてくるということですが、その中でも特に
強い感情、心の振れ幅の大きな感情に注意を向けるのです。その
感情には喜びや感動のようにポジティブなものもあれば、悲しみ
や怒りのようにネガティブなものもあるでしょう。人生の目的
を見出す上ではそのどちらも大事であり、そういう意味では、
感情にポジティブもネガティブもないのかもしれません。

感情のことを英語で“emotion”と言いますが、“motion”とは
「動き」を意味し、“e”を“energy”の“e”ととらえると、
それは「動くエネルギー」と解することもできます。要するに、
感情とは、人を動かす「心のスイッチ」のようなものなのです。
そして、おもしろいことに、人によってどこに心のスイッチが
あるかは異なります。どんなことに喜びを感じ、どんなことに
痛みを感じるかは違うわけで、それがその人をその人らしく
している1つの源であると言えるでしょう。

そもそも、なぜ心が動くかと言えば、そこにその人にとって
大切な何かがあるからです。それが満たされれば、心はいわゆる
ポジティブな方向に振れますし、逆にそれが満たされなければ、
心はいわゆるネガティブな方向に振れます。私たちはついこう
した心の動きに振り回され、それこそ一喜一憂して、それが
どこから来ているのかについて振り返ることはほとんどあり
ませんが、静かにその出所を見つめれば、そこにはその人が
その人である所以が隠されているのです。

たとえば、私はレストランなどで食事をしている時に、誰かが
ウエイターさんやウエイトレスさんに対して、知り合いでも
ないのに、ぞんざいな口のきき方をしているのを見ると、
とても嫌な気分になります。逆に、電車に乗っていて、若い
人がお年寄りに席を譲ったりしている光景を見ると感動します。
これらの心の動きの奥には、「尊重」とか「敬意」といった
ものがあり、それは私の人生の目的につながっています。

さて、あなたは、どんなことに心が動き、その奥にはどんな
人生の目的が潜んでいるのでしょうか?
(榎本 英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】<キャンセル待ち>
・日程:2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 早割特典あり(詳細は以下のリンクでご確認
ください)
・定員:30名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382396/

【天職創造セミナー】<定員間近!>
・日程:2016年11月19日(土)・20日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/426028/

【天職創造セミナー】<キャンセル待ち>
・日程:2016年12月10日(土)・11日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/405013/

*よく生きる研究所の主催で、榎本が行う「天職創造セミナー」および
「アクティブ・ホープ・ワークショップ」は上記のもので当面最後と
なります。ご了承ください。

<<その他、榎本が登壇予定の公開イベント>>

【トークイベント:本当の仕事とは?~自分に噓をつかない生き方・
働き方】
・主催:ダイナミクス・オブ・ダイアログ
・日程:2016年10月2日(日)13:20-16:40
・会場:東京・六本木 国際文化会館 講堂
・参加費:8,000円
・定員:60名
・詳細・お申し込み:http://world-cafe.net/event/post-48.html

【20代に考えておきたい、自分に噓をつかない生き方・働き方】
・主催:20代からのよく生きるプロジェクト
・日程:2016年10月13日(木)18:30-21:30
・会場:東京・千代田 アーツ千代田3331
・対象:30歳未満の学生・社会人
・参加費:学生1,500円 社会人:3,000円
・定員:100名
・詳細・お申し込み:
https://www.facebook.com/events/1272049722828009/

【藤野の学校】
・主催:藤野の学校事務局
・日程:2016年10月15日(土)13:00₋16:00
・会場:神奈川・藤野 牧郷ラボ
・参加費:8,000円
・定員:25名
・詳細・お申し込み:
https://www.facebook.com/events/1760381820906815/

【どんなときにも希望を失わない生き方 ACTIVE HOPE
 ~自然と地球と未来とつながる生き方】
・主催:一般社団法人 関係性開発協会(RCI)
・日程:2016年10月17日(月) 19:00-21:00
・会場:東京・後楽園 文京シビックセンター区民会議室4階ホール
・参加費:RCI正会員・賛助会員1,000円 非会員4,000円
・定員:50名
・詳細・お申し込み:http://peatix.com/event/199497/view

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3.よく生きるリソース 「人生の目的」 本田健著(大和書房)

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著者は『ユダヤ人大富豪の教え』をはじめ、「お金と幸せ」
「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマとした数々の
著作があり、その発行部数は累計600万部を超えるというベスト
セラー作家です。私は今月初旬に縁あって初めてお話しする機会
があり、彼の主宰するセミナーにも参加させていただいたのです
が、そのユーモアあふれる語り口にすっかり惹きつけられて
しまいました。

数ある著作の中でも本書は比較的最近書かれたもので、発行は
2014年12月25日となっています。ちなみに、私が書いた『本当の
仕事』の発行が同じ年の12月19日で、本書の帯に書かれている
「自分の人生を後悔で終わらせないために」という言葉が、私の
本の帯に書かれている「もし今のまま働き続けて、人生最期に
“後悔しない”と言い切れますか?」という言葉と非常に似て
いたこともあり、その偶然に驚いて思わず手に取ったという経緯
があります。

発行日や帯の言葉だけでなく、実は内容的にも重なるところが
あり、特に人生の目的(私の本では「存在意義」と表現して
いますが)に関するとらえ方はかなり近いので、本書も共感
しながら読ませていただきました。今回のコラムで取り上げた
こととの関連性で言うと、「人生の目的はワクワクすることの
周辺にある」とか「トラウマに人生の目的は隠されている」
という表現で、本田さんも私たちの心が大きく動くところに
人生の目的があることを指摘されています。

それ以外にも、どうやったら自分の人生の目的を見出すことが
できるかについて、いろいろな角度から書かれているほか、
幸せな人生を生きるために知っておいた方がいいことが、わかり
やすく簡潔に書かれています。ちなみに、本田さんの人生の目的
は「人が自分の本質を思い出すことをサポートする」ことだそう
です。本書はまさにこの人生の目的に沿って書かれたものなの
でしょう。

本田さんが本書で指摘されていることで大事なことだなと思った
ことに、「人生の目的の落とし穴」というものがあります。
たとえば、「人生には意味があるはずで、それを見つけない限り
幸せにはなれない」と思い込んでしまうと逆に苦しくなって
しまうということがあります。そういう場合は、「人生には意味
があるかもしれないし、ないかもしれない」というところから
出発し、「もし仮にあったとしたら、それは何だろう?」と
気軽に考えた方がいいとのこと。私も、人生の目的はあたかも
推理小説の謎を解くように、楽しみながら探っていくのが一番
いいと思っていて、もしも楽しめないようであればむしろ
手放した方がいいと思っています。

いずれにせよ、人生の目的というものに興味がある人はぜひ本書
を手に取ってみることをお薦めします。

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4.編集後記

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「よく生きるインフォメーション」のところでも書きましたが、
この度、これまでよく生きる研究所主催で開催してきた「天職創造
セミナー」および「アクティブ・ホープ・ワークショップ」を
年内開催予定のものをもって一旦完了させていただくことになり
ました。これまで、これらのプログラムにご参加いただいた皆さま、
そしてご家族や友人・知人をご紹介いただいた皆さま、本当にあり
がとうございました!

来年以降は、自らの人生の目的に沿って、また新しいことにチャ
レンジしていきたいと思っていますので、引き続きご支援のほど、
どうぞよろしくお願いいたします。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
いただいた方にお送りしています。

※この通信のバックナンバーをご覧になりたい方は、以下のリンク
からご覧いただくことができます。
http://yokuikiru-kenkyusho.blogspot.jp/

なお、万が一このようなメルマガが送られてくるお心当たりがない方、
あるいは心当たりはあるが購読を希望しないという方は、恐れ入り
ますが、以下のリンクをクリックして購読を解除していただければ
幸いです。
http://accessmail.jp/z.php3?pk=UIdxdBdi&em=info@yokuikiru.jp

お問い合わせ:info@yokuikiru.jp

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2016年7月26日火曜日

よく生きる通信Vol.25 「正しい問いを問う」

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         ★よく生きる通信 vol.25★
           2016年7月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

ここ藤野では、ここ数日梅雨の割には涼しく過ごしやすい日が続い
ていますが、皆さんのお住まいのところはいかがでしょうか?

今年の夏は猛暑になるという噂を聞いていたので、おひさまも
ちょっと小休止という感じなのでしょうか。

さて、「よく生きる通信」Vol.25をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「正しい問いを問う」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/9/4 夢を変え、ゲームを変え、世界を変える(東京・神田)
・2016/9/10-11 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/10/8-10 アクティブ・ホープ・ワークショップ(長野・女神山)
・2016/10/15 藤野の学校(神奈川・藤野)
3.よく生きるリソース:「悩む力」「続・悩む力」
姜尚中著(集英社新書)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「正しい問いを問う」

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私はよく生きる上で欠かせないことの1つに「正しい問いを問う」
ということがあると考えています。ここで「正しい問い」という
のは、必ずしも誰にでも通用するような唯一絶対の問いという意味
ではなく、その人にとって役に立つ、その人を力づけるような問い
を指しています。そして、それは頭で考えて出てくるというより、
知らないうちに自分の中から自然に湧いてくるようなもので、
すぐには消えず、ずっと心のどこかに引っかかっているような
問いです。

たとえば、私の場合、子どもの頃からサラリーマンとして働いて
いた父親の姿を見ながら、「人はなぜ働くのか?」「仕事とは
そもそも何なのか?」という問いを抱いていました。そして、
その問いは自分が大人になって会社で働くようになってからも
消えず、30代前半でアメリカに留学した際、まさに「仕事」を
テーマに研究し、それで修士論文を書きました。さらに、「天職
創造セミナー」という上記のような問いについて考える研修を
開発し、提供するようになり、一昨年にはついに『本当の仕事』
という本まで上梓するに至りました。このように、正しい問いを
抱き、それを問い続けることはその人の人生を動かし、形づくる
パワーを持っていると私は考えています。

ところが、現代社会においては「正しい答え」を求める風潮が
あまりに強く、学校教育においても、仕事においても、いかに
正しい答えを早く見つけるかということが評価されるしくみに
なっているため、どうしても問いを抱き続けるのが難しい傾向が
あります。特に、上記のような「正しい問い」は、すぐには答え
が出てこないようなものである場合が多いので、いかにそうした
問いと「ともにいる」ことができるかが大切になってきます。
というのも、正しい問いはワインのようなもので、熟せば熟す
ほど味わいのある答えが出てくるからです。

ところが、「早く答えを見つけなければ」というプレッシャーを
感じていると、なかなかこうした問いを問うこと自体をしなく
なりますし、仮に問うたとしても、その答えを安易に外に求めて
しまったり、表面的な答えで満足してしまったりしてしまいがち
です。そのようなことを続けていると、人生自体がだんだんと
味気のないものになっていってしまうでしょう。

そうならないためには、まず答えよりも問いに重きを置くことが
必要となります。現代のように、答えを極端に重視する世の中に
おいては、問いの価値が失われ、問いを抱くこと自体がいけない
ことだという考えさえ見受けられます。そうではなく、問いを抱く
こと、そしてそれを問い続けることにこそ価値があるんだという
考え方に転換していかなければならないと私は思います。こうした
「答え重視の生き方」から「問い重視の生き方」への転換は、口で
言うほど簡単ではないかもしれませんが、もしそれができれば、
間違いなく人生に幅と奥行きをもたらしてくれるでしょう。

このコラムを締めくくりにあたり、私にこのことを教えてくれた
大好きな文章を紹介したいと思います。これはオーストリアの詩人
ライナー・マリア・リルケが書いた『若き詩人への手紙』の中に
収められている一節です。

「私はできるだけあなたにお願いしておきたいのです。あなたの
心の中の未解決なものすべてに対して忍耐を持たれることを。
そうして問い自身を、例えば閉ざされた部屋のように、あるいは
非常に未知な言語で書かれた書物のように、愛されることを。
すぐ答えを捜さないでください。あなたはまだそれを自ら生きて
おいでにならないのだから、与えられることはないのです。
すべてを生きるということこそ、しかし大切なのです。今は
あなたは問いを生きてください。そうすればあなたは次第に、
それと気づくことなく、ある遥かな日に、答えの中へ生きて
行かれることになりましょう」

さて、あなたは今どんな問いを生きていますか?
(榎本 英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【天職創造セミナー】
・日程:2016年9月10日(土)・11日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382394/

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】<定員間近!>
・日程:2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 
・定員:24名
・詳細〓お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382396/

<<その他、榎本が登壇予定の公開イベント>>

【夢を変え、ゲームを変え、世界を変える
 ~個の力を集団の力に変える1日~】<NEW!>
・日程:2016年9月4日(日)  10:00-16:30
・会場:東京・神田 ベルサール神田
・参加費:一般28,000円 ユース(25歳未満)18,000円 
・主催:NPO法人セブン・ジェネレーションズ
・詳細・お申し込み:
http://www.sevengenerations.or.jp/#!change-the-world-2016/b5kax

【藤野の学校 ~境界の仕事&起業コース】<NEW!>
・日程:2016年10月15日(土)13:00-16:00
・会場:神奈川・藤野 牧郷ラボ
・参加費:8,000円
・定員:25名
・主催:藤野の学校事務局
・詳細・お申し込み:
https://www.facebook.com/events/135038076902189/

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3.よく生きるリソース 「悩む力」「続・悩む力」
  姜尚中著(集英社新書)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

今回ご紹介したいのは、2008年に出版され、ベストセラーになった
『悩む力』と東日本大震災後に出版されたその続編。著者は、よく
メディアにも登場されるのでご存知の方も多いと思いますが、東京
大学教授で政治学者の姜尚中氏。実は、最初の本が出た時からその
タイトルが気になっていたにもかかわらず、最近までなかなか読む
機会がなかったのですが、今回の「よく生きるコラム」のテーマと
関係しそうだという予感もあり、続編も含めて一気に読みました。

通常、「悩む」というのは、あまり肯定的にとらえられることはあり
ませんが、著者は「力」という言葉を使っていることからもわかる
ように、それを1つの能力、あるいは資質としてとらえています。
「悩む」とは言い換えると、「すぐに答えが出ないような、でも重要
な問いに対して、自分なりの答えが出てくるまで問い続ける」という
ことであり、コラムで用いた表現を使えば「問いとともにいる」、
あるいはリルケの言う「問いを生きる」ということだと思います。

本書を読んでおもしろかったのは、この「悩む力」がなぜ求めら
れるようになったかを、今から約100年前の時代を生きた日本の
文豪、夏目漱石とドイツの社会学者、マックス・ウエーバーらの
考え方を紹介しながら、大きな時代の流れの中で説明している点
です。すなわち、産業革命前夜に科学が宗教に代わって世界の
中心的な価値観を形成するようになって、それまで問う必要が
なかった「自分とは何者か?」とか「自分は何のために生きる
のか?」といった問いに対して、1人ひとりが答えを出さなく
てはいけなくなった、つまり悩まなくてはいけなくなったという
のです。

さらに、資本主義の発展によって、人間が道具化・商品化される
ようになったことで、ますますこうした問いを問うことが困難に
なってきていると著者は指摘します。そして、こういう時代状況
の中で私たちがこうした問いにそれぞれ答えを見出そうとする
のは、かなり過酷なことであるとも主張しています。現代の日本
において、うつ病を患う人や自らの命を絶つ人が後を絶たない
のも、このことと無関係ではない。そう言うのです。

そういう過酷な宿命を引き受けた上で、でも私たちは悩みながら、
それぞれの答えを見出していくしかない、というのが著者の結論
です。だからこそ、「悩む力」が必要だと。確かに、すぐに答えが
出ないような問いに向き合い続けるには力が必要だと私も思います。
そして、その力はただ単によく生きるということだけでなく、ある
種のサバイバル能力としても求められているということを、私は
本書を読んで痛感させられました。

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

6月27日から7月4日にかけての約1週間、米サンフランシスコの
郊外にあるリバーズベンド・リトリートセンターという自然豊かな
場所で、私の人生の師の一人であるジョアンナ・メイシー氏による
「つながりを取り戻すワーク」の集中プログラムを実施しました。

日本から来た36名の参加者とともに、自分や他者、世界や地球、
そして過去や未来とも深くつながる体験をすることができ、
まさに揺るぎない希望を感じる時間となりました。88歳に
なったジョアンナもかつて見たことがないくらいにパワフル
で、地球とつながって生きることがいかにその人に力強さを
与えるかを改めて感じた貴重な機会となりました。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
いただいた方にお送りしています。

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からご覧いただくことができます。
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なお、万が一このようなメルマガが送られてくるお心当たりがない方、
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◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

2016年6月20日月曜日

よく生きる通信 Vol.24「横から目線で人を見る」

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         ★よく生きる通信 vol.24★
           2016年6月号
◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

いよいよ梅雨が到来し、蒸し暑さが徐々に増してきましたが、
皆さんいかがお過ごしでしょうか?

私の家には冷房がないので、暑い時はもっぱら扇風機のお世話に
なるのですが、今年もそろそろ納戸から引っ張り出してこないと
いけないかなと思っているところです。

それでは、「よく生きる通信」Vol.24をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「横から目線で人を見る」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/7/23-24  天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/9/10-11 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/10/8-10 アクティブ・ホープ・ワークショップ(長野・
女神山)
・2016/7/13  より良い未来&人生のために(東京・国分寺)
3.よく生きるリソース:「自分の小さな箱から脱出する方法」
アービンジャー・インスティチュート著(大和書房)
4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

1.よく生きるコラム 「横から目線で人を見る」

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

よく「上から目線」という言葉を耳にしますが、これはたいてい
「人を見下している」とか「偉そうな」といった否定的な意味合い
で使われていますね。では、上から目線にならないためには、逆に
「下から目線」になればいいのでしょうか?「人を見上げる」と
いうと、相手を尊敬したり、相手に憧れたりという、どちらかと
言えば肯定的な意味合いがありますし、偉そうでないとすれば
「謙虚」という、これまた肯定的な意味合いを含んでいます。

しかし、「上から目線」も「下から目線」も、ともに人を上下の
関係で見ることには変わりなく、そのこと自体が多くの問題を
もたらしていると私は考えています。福沢諭吉がかつて「天は人の
上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言ったように、本来
人には上下はないはずなのに、私たちにはどうしても人を上下で
見てしまう癖があるようです。何を基準にして上とか下とか言うか
は、社会的な地位だったり、経済的な豊かさだったり、年齢だった
り、学歴だったり、体格だったり、容姿だったり、何らかの能力の
差だったりと様々ですが、多くの人はほとんど無意識のうちに
これらのものさしを使って他人と自分を引き比べているのでは
ないでしょうか?

先ほど、「人を上下の関係で見ること自体が多くの問題をもたらし
ている」と書きましたが、これは誰かに「上から目線」で見られて
いる人だけでなく、誰かを「上から目線」で見ている人にとっても
言えることだと私は考えています。もしもあなたが誰かに「上から
目線」で見られたとしたら、どんな想いがするでしょうか?きっと
自分の尊厳が傷つけられたような気がするはずです。一方、誰かを
「上から目線」で見た時はどうでしょうか?その瞬間は優越感に
浸れるかもしれませんが、よく言われるように、優越感は劣等感の
裏返しなので、その人はどこかで自分自身を見下している、すな
わち「上から目線」で見ていることになるのです。

実際、レストランなどでウエイトレスの人にぞんざいな口をきいて
いた人が同じテーブルに座っていた自分より立場が上の人(だと
本人が思っている)にへりくだった口のきき方をしているのを何度
か見たことがあります。私はそういうシーンに遭遇すると悲しく
なります。何が悲しいかと言うと、見下されたウエイトレスさんの
気持ちを慮ると同時に、その人自身が日々自分を見下していること
の辛さを想うと何とも言えず悲しい気持ちになるのです。

この「上か下か」という、自分にも他人にも痛みをもたらすシー
ソーゲームから脱出するための鍵は、「横から目線」で人を見る
ことだと私は思います。単純なようですが、上でもなく下でもない
とすれば、横からしかない、そう思うわけです。相手がどんな立場
の人であれ、自分と対等な存在として見る。これは言うは易しです
が、特に人をずっと上下で見てきた人にとってはそう簡単にできる
ことではありません。

人を「横から目線」で見る上で一つ大事なことは、好奇心をもって
その人のことをありのままに見ることだと思います。なぜなら、
そのこと自体が相手を尊重する行為であり、それをした時点で
すでに目線が上から(あるいは下から)横にシフトしたことを示し
ているからです。
(榎本 英剛)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

2.よく生きるインフォメーション

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【天職創造セミナー】
・日程:2016年7月23日(土)・24日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357670/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年9月10日(土)・11日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382394/

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】※
・日程:2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 早割特典あり(詳細は以下のリンクでご確認
ください)
・定員:24名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382396/

※この回をもって、当面よく生きる研究所主催で行う「アクティブ・
ホープ・ワークショップ」は最後となりますので、ご関心のある方
はぜひこの機会にご参加ください(6月末まで早割特典をご活用
いただけます)。

<<その他、榎本が登壇予定の公開イベント>>
【より良い未来&人生のために ~トランジション藤野からの提案】
・主催:スロースクール夜間部
・日程:2016年7月13日(水) 19:00-21:00
・会場:東京・国分寺市 カフェスロー
・参加費:2,000円(ワンドリンク付き)
・定員:30名
・詳細:https://www.facebook.com/events/1748613378761437/
・お申し込み:yakanbu.club@gmail.com

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3.よく生きるリソース 「自分の小さな箱から脱出する方法」
  アービンジャー・インスティチュート著(大和書房)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

本書の日本語訳が出版されたのは2006年なので、もう10年ほど前に
なりますが、最近、ラグビー日本代表の五郎丸歩選手がある新聞の
書評欄で取り上げたことがきっかけで、多くの書店で平積みに
なっているのをよく見かけるようになりました。

原書のタイトルは「Leadership and Self-Deception」で、その
まま訳すと「リーダーシップと自己欺瞞」となります。つまり、
これはもともとリーダーシップの文脈で書かれたものなのですが、
そこに紹介されているコンセプトは広く一般的な人間関係に応用
できる、汎用性の高いものだと思います。そういう意味では、日本
語版のタイトルの方がこの本の内容にふさわしいかもしれません。

そのタイトルにある「箱」というのが本書のキーコンセプトなので
すが、相手の人をありのままに見ずに、自分に都合がいいように
歪めて見てしまうことを「箱に入る」と言います。そして、箱に
入ったままの状態で相手と関わると、有意義で効果的な人間関係を
築くことが難しくなってしまうと著者は主張します。

そもそもなぜ箱に入ってしまうかというと、本来人間は誰かの役に
立ちたいと思っているんだけれども、何らかの事情でその思いに
したがわないと、今度は自分を正当化したり、相手を責めたりする
ようになり、ついには箱に入ってしまうというわけです。たとえば、
ある人が電車に乗って座っていたら、目の前にお年寄りが立ったと
しましょう。そして、その瞬間、その人は立って席を譲ろうと
思ったのですが躊躇してしまったとしましょう。さて、その時その
人の中では何が起きるでしょうか?「俺は仕事で疲れてるんだ」と
自分を正当化したり、「人の目の前に立つなんて、なんてずうずう
しい年寄りなんだ」と相手を責めたり、といったことが起きるかも
しれませんね。これこそがまさに「箱に入る」ということなのです。

では、どうしたら箱から出られるのか?本書によれば、それは、
相手も自分と同じニーズを持った尊重すべき1人の人間であると
見ることであると言います。つまり、今回の「よく生きるコラム」
で取り上げた「横から目線」で人を見るということと基本的に同じ
ことです。本書を読むと、なぜ人は「上から目線」(あるいは
「下から目線」)になり、どうしたらそれを「横から目線」に
シフトできるかということについてたくさんのヒントが得られる
ことと思います。

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

先月後半、北京郊外で3月の上海郊外に続き、2回目の「アクティブ・
ホープ・ワークショップ」を開催してきました。

昨年から約3ヶ月に1回のペースで中国に通っていますが、リーダー
シップ・プログラムやアクティブ・ホープ・ワークショップを
通じて深く関わる中で、ますます「横から目線」で中国の人たちと
接することができるようになってきた気がします。

それまでは、正直に言って、よく知らないが故にどうしても
「中国人」というラベルで見てしまっていましたが、1人ひとりを
知れば知るほど、その魅力が伝わってきて、愛すべき存在になって
いきました。やはり人として直接つながることって大事なんだなと
つくづく感じた次第です。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
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◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

よく生きる通信 Vol.23 「❝よく生きる❞のトライアングル」

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇
         ★よく生きる通信 vol.23★
           2016年4月号
◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

ゴールデン・ウイークも間近に迫ってきましたが、皆さんいかが
お過ごしでしょうか?

今、私はイギリスに来ています。昨年に引き続いて「よく生きる
ツアー」実施のために、かつて3年ほど暮らしたフィンドホーン
というエコビレッジを17名の参加者とともに訪れています。

現在自分が関わっている活動の多くはここでの暮らしがきっかけ
となって始めたもので、そういう意味ではここに来るといつも初心
を思い出し、気持ちを新たにすることができます。

それでは、「よく生きる通信」Vol.23をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「“よく生きる”のトライアングル」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/5/14-15 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/7/23-24  天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/9/10-11 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/10/8-10 アクティブ・ホープ・ワークショップ(長野・女神山)
3.よく生きるリソース:「幸せになる勇気」
岸見一郎・古賀史健著(ダイヤモンド社)
4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

1.よく生きるコラム 「“よく生きる”のトライアングル」

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

私は約3年前に「よく生きる研究所」を立ち上げましたが、
「“よく生きる”とはどういうことか?」という問いはそれこそ
20代の頃から持っていて、これまでやってきたことはほとんど
すべてその問いから生まれてきたものであると言っても過言では
ありません。

とは言え、20年以上この問いについて考えてきたからと言ってその
答えを見出したわけではありません。もちろん、この問いに対して
万人に当てはまるような答えがあるわけではなく、100人いたら
100通りの“よく生きる”があるのだと思います。つまり、私は
私なりの“よく生きる”をこれまで探求してきたわけで、きっと
死ぬまで探求し続けるのだと思いますが、その中でこれはきっと
変わらないだろうと思っていることがいくつかあります。

その1つは、“よく生きる”ということを考える時、それは自分
だけがよく生きるだけではなく、それが他者にとってのよく生きる
につながり、さらには地球にとってのよく生きるにつながる必要が
ある、ということです。そして、これら自分・他者・地球という
3つの側面すべてにおいて“よく生きる”を実践することを、私は
「“よく生きる”のトライアングル(三角形)」と呼んでいます。
私たちは個人として社会から切り離されて生きているわけではなく、
また人類として地球から切り離されて生きているわけではあり
ません。むしろ、その一部として生きているのであり、それらとの
つながりなくしてよく生きることなど到底できない、と思うのです。

ところが、グローバルな時代となって、かつてないほど人類が密接
につながり合うようになった現在、皮肉なことに「自分さえよけ
ればいい」あるいは「自分たちさえよければいい」という考え方が
蔓延し、環境破壊や社会的な不平等、さらには戦争やテロはとど
まるところを知らない状況となっています。一方、このような状況
を乗り越えるべく、自分・他者・地球の3者がともによく生き
られるような道を地域という単位で模索してきたコミュニティが
あります。

私が現在訪れているイギリスの北方スコットランドにあるフィンド
ホーンがその1つの例です。ここはもともと50年ほど前にスピリ
チャルなコミュニティとして立ち上がったのですが、今では持続
可能な暮らしを営むエコビレッジとして世界的にその名を知られる
ようになりました。食に関しては、自分たちで農場を持ち、有機
栽培で育てた野菜でかなりの程度自給していますし、エネルギーに
関しても、風力発電用の風車を自前で4基所有し、高い自給率を
誇っています。さらには、自分たちの地域通貨を発行し、リサイクル
やシェアリングも盛んで、まさに生活基盤が従来の使い捨て型では
なく、循環型のしくみになっています。

ただ、こうした技術やしくみだけで“よく生きる”のトライアングル
が実現できるわけではありません。それを実現するためには、まず
自分だけでなく、他者や地球と意識の上でつながる必要があります。
フィンドホーンでは、そのための方法として瞑想や歌、ダンス、
ゲームなどが用いられていますが、その中でもこのコミュニティに
特有なものに「アチューンメント」と呼ばれるものがあります。

「アチューンメント」とは、「波長を合わせる」というような意味
で、仕事をする前に同じ職場で働く人たちが輪になって手をつなぎ、
短い祈りの言葉を唱えながら、自分やその場にいる他者や自然など
と波長を合わせる儀式のことを言います。こう書くと何やら怪しげ
に聞こえるかもしれませんが、実際にやってみると、本当にそこに
いる人たちやそこにあるものすべてと波長が合ったような感じがして、
気持ちよく働けるので、仕事も捗るという効果があります。

もちろん、アチューンメントだけが“よく生きる”のトライアングル
を実現する唯一の方法ではありませんし、他にも無数の方法がある
と思いますが、大事なことはこのトライアングルは何もエコビレッジ
みたいな場所でなくても、その人が意識的に取り組みさえすれば、
どこにいても実現が可能だということです。さて、あなたはどの
ようにこのトライアングルを実現していきますか?
(榎本 英剛)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

2.よく生きるインフォメーション

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【天職創造セミナー】
・日程:2016年5月14日(土)・15日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357669/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年7月23日(土)・24日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357670/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年9月10日(土)・11日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382394/

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】<NEW!>
・日程:2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 早割特典あり(詳細は以下のリンクでご確認
ください)
・定員:24名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382396/

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

3.よく生きるリソース 「幸せになる勇気」
   岸見一郎・古賀史健著(ダイヤモンド社)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

本書はちょうど2年前にこのメルマガでも取り上げた「嫌われる
勇気」の続編であり、再び哲人と青年の夜を徹しての対話という
形式をとりつつ、前作同様、アドラー心理学の神髄をわかりやすく
伝える内容になっています。

当時、図書館司書をしていた青年は、教育という世界でアドラー
心理学を通して学んだことを実践すべく教師に転身するが、そこで
思うような教育ができず、ついにはアドラー心理学に失望し、それ
との決別を胸に3年の月日を経て再び哲人の書斎を訪ねます。自分
が教育の現場で経験した挫折はアドラー心理学の不完全さによる
ものだと確信して疑わない青年は、今度こそ哲人との議論に打ち
勝つべく挑戦的な問いを投げかけるが、哲人は前回同様、一切
動じることなく、見事な論理立てで青年からの挑戦をことごとく
斥けていきます。そして、ついに青年は再びアドラー心理学に
対する信頼を取り戻し、夜明けとともに哲人の書斎を後にします。

今回のメインテーマは「愛」。それと本書のタイトルである「幸せ
になる勇気」とがどう結び付いてくるのか?愛と言うと、どこか
甘い響きがありますが、アドラーの語る愛は一味も二味も違って
いて、そこには厳しさや難しさがあります。というのも、アドラー
にとって愛とは、相手が誰であっても、そしてその相手が自分の
ことをどう思っていたとしても、自分がまずその相手を愛する
という決意から始まるからです。そして、それは自己中心的な
「わたし」の世界からの脱却を伴い、「わたしたち」という世界に
足を踏み入れることでもあります。本当の意味で幸せになるには、
いつも「愛される」ことを願って「わたし」の世界で怯えている
のではなく、勇気を持って自ら「愛する」ことで「わたしたち」
という未知の世界に足を一歩踏み出す必要がある。これがアドラー
の語る愛であり、「幸せになる勇気」なのです。

このことは、今回のコラムで取り上げた“よく生きる”のトライ
アングルを実現するためにも大事なことだと私は考えています。
というのも、個人としてよく生きるだけでなく、他者や地球に
とってもよく生きるためには、アドラーの言葉を借りるなら、
「わたし」という世界から「わたしたち」という世界に移行する
必要があり、それにはやはり勇気が必要になると思うからです。

というわけで、「よく生きる勇気」を得たい方にはお奨めの1冊
です。

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

昨年に続いて2回目の実施となる「よく生きるツアー」。実は、
当初はお申し込みが伸びず、開催が危ぶまれていたのですが、
蓋を開けてみれば昨年と同じ17名の参加者を得て、こうして
無事開催することができてうれしく思っています。

昨年のツアーに参加された方たちからは、「人生が大きく変わる
ような体験だった」という声が上がっており、今回のツアーが
参加される方の人生にどのような影響を与えるのか、今から
楽しみです。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
いただいた方にお送りしています。

※この通信のバックナンバーをご覧になりたい方は、以下のリンク
からご覧いただくことができます。
http://yokuikiru-kenkyusho.blogspot.jp/

なお、万が一このようなメルマガが送られてくるお心当たりがない方、
あるいは心当たりはあるが購読を希望しないという方は、恐れ入り
ますが、以下のリンクをクリックして購読を解除していただければ
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2016年3月31日木曜日

よく生きる通信Vol.22 「誇りとリーダーシップ」

◇◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇
         ★よく生きる通信 vol.22★
           2016年3月号
◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

気がついたら、もう桜の季節となりましたが、皆さんいかがお過ごし
でしょうか?

私の方は、6週間にわたる「世界青年の船」事業がやっと終わったか
と思ったら、また2週間ほど中国での仕事があり、ようやく落ち着いて
メルマガが書ける状況になったところです。

では、「よく生きる通信」Vol.22をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「誇りとリーダーシップ」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/4/15-17  アクティブ・ホープ・ワークショップ(長野・女神山)
・2016/5/14-15 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/7/23-24  天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/9/10-11 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
3.よく生きるリソース:「WHYから始めよ!」
サイモン・シネック著(日本経済新聞出版社)
4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

1.よく生きるコラム 「誇りとリーダーシップ」

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

私は昨年から内閣府が主催する「世界青年の船」事業に関わって
います。この事業は別名「次世代グローバルリーダー事業」と
呼ばれていて、日本を含む世界11ヶ国から集まった18~30歳の
若者たち(この事業では彼ら・彼女らを性別に関わらず「参加
青年」と呼んでいます)200名以上と1ヶ月以上にわたり船の上で、
そして訪問した国でさまざまな活動やプログラムを行い、それら
を通してこれからの世界で通用するリーダーを育てることを目的
として、1988年以来開催されてきたもので、今年で28回目になり
ます。

昨年と今年、2年連続で関わらせていただいて一番感じたことは
「誇り」と「リーダーシップ」がいかに密接に関係しているか、
ということでした。日本の参加青年には申し訳ないのですが、
外国の参加青年に比べると、全体的にリーダーシップが弱いと
いう印象をどちらの回でも受けました。それは、日本の参加青年
の多くがまだ学生で社会人経験がないということ、そしてプロ
グラムがすべて英語で行われるということも影響していると思い
ますが、そのことを差し引いてもやはり物足りなさを感じざるを
得ませんでした。

日本の参加青年でこのメルマガを読んでくださっている方もいる
と思うので、その人たちの名誉のためにお断りしておきたいのは、
これは決して個人的な問題ではなく、より大きな国家的あるいは
文化的な問題であり、特に教育的な問題なのではないか、という
のが私の達した結論だということです。何より、日本の参加青年
自身が外国の参加青年との間にあるリーダーシップの差を痛感
したのではないかと思います。

このような差をもたらしているものはいったい何なのだろうかと
考えていて気がついたのが、外国の参加青年は総じて自分の国の
文化や歴史に大きな誇りを感じているということでした。それを
一番感じたのは国家斉唱の時でした。事業期間中に参加国の中で
建国記念日などの特別な日があると、朝礼の際に国旗を掲揚し、
国家を斉唱する場面があったのですが、彼らの歌う姿はいつも
気高く、自国に誇りを感じていることが全身から漲ってくるよう
でした。一方、日本の参加青年の場合、事業期間中に自国の建国
記念日があったにも関わらず、国家の斉唱が行われなかった
ばかりか、誰もそのような日であることに気がついていない様子
でした。

もちろん、国家を歌えば誇りが芽生えるというわけではあり
ませんし、私にしてもそれを学校で義務化すべきだか、そういう
ことを言いたいわけではありません。しかし、家庭での教育を
含めて若いうちから自国の文化や歴史について学び、それに誇り
を持てるような教育を施すことはグローバルな時代のリーダーを
育成していく上でとても大事な要素であると2回の事業参加を
通じて痛感しました。

このことは昨年、この事業でニュージーランドに行った時に彼の
国の先住民族であるマオリ族の学校を訪れた際、確信に変わり
ました。この学校では授業はすべてマオリ語で行われ、通常の
課目以外にもマオリの文化風習や歴史について徹底的に教えて
いました。小学生くらいの子どもたちがマオリ式の歓迎の儀式で
迎え入れてくれたのですが、まだ小さいその顔にもすでに誇りが
はっきりと表れていたのは衝撃的でした。なお、ニュージーランド
ではマオリ族以外の子供たちも学校でマオリの文化風習や歴史を
学ぶので、彼の国の参加青年は皆それらに通じているのも驚き
でした。

「誇り」という時、個人としての誇りもありますし、それも大切
だと思いますが、自分がより大きなものの一部であると感じる時、
その誇りはより地に足のついた力強いものになるのではない
でしょうか?そして、その誇りは自国の文化や歴史がもっとも
優れているといった排他的な優越感に基づくものであっては
ならないと思います。むしろ、お互いの国の文化風習を尊重し、
それらの違いを優劣ではなく、多様性がもたらす豊かさととらえ
る寛容さが必要だと思います。そのような「本物の誇り」を身に
つけた若い世代の台頭を心待ちにしたいと思います。
(榎本 英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】<キャンセル待ち>
・日程:2016年4月15日(金)~17日(日)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 
・定員:24名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/340987/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年5月14日(土)・15日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357669/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年7月23日(土)・24日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357670/

【天職創造セミナー】<NEW!>
・日程:2016年9月10日(土)・11日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382394/

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3.よく生きるリソース 「WHYから始めよ!」
   サイモン・シネック著(日本経済新聞出版社)

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著者はコロンビア大学の戦略的コミュニケーションプログラム講師
やランド・コーポレーションの非常勤研究員を務めながら、企業や
非営利組織のリーダーたちに対し「人をインスパイアする方法」を
伝授してきた新進気鋭のコンサルタント。2009年にワシントンで
開催されたTEDにおいて、本書で紹介されている「ゴールデン・
サークル」について彼が行った講演の動画は記録的な閲覧数を誇る
人気動画となったのでご覧になった方もいるかもしれません。

「ゴールデン・サークル」とは真ん中からWHY、HOW、WHAT
と広がる三重の円からなるシンプルなモデルで、人をインスパイア
するようなメッセージを発している個人や組織は必ずこの順番で
コミュニケーションをとっていると著者は言います。一方、世の中
の大半のメッセージはこの逆、すなわちWHAT、HOW、WHY
の順番になっていて、それはたとえどんなに丁寧で理に適ったもの
であったとしても決して人をインスパイアすることはないという
ことを彼はさまざまな例を挙げながら説明しています。

たとえば、アップル社がiPhoneやiPodなど携帯電話業界や音楽業界
を劇的に変えるような製品を次々と世に出し、熱烈なファンに支持
され続けているのは、必ずしも同社の商品開発力やマーケティング力
が原因というよりも、”Think different”というスローガンに表れ
ているように、同社が既存の考え方やしくみに対して挑戦し続ける
ことを企業理念とし、それを一貫して継続してるところにあると
著者は主張しています。つまり、同社の顧客は同社が「なぜ」その
ような商品を開発し、そのような事業を展開しているのかという
「なぜ=WHY」を買っているのであって、必ずしも商品という
「なに=WHAT」を買っているわけではない、というわけです。

私も仕事やリーダーシップについて取り上げる時に、「何をするか
よりもなぜそれをするのかの方が大事である」という話をよく
します。なぜなら、WHYこそがすべての原点であり、その人の
リーダーシップの源泉だと考えているからです。そのWHYが
はっきりとしている時、その人自身もそれに突き動かされるし、
周りの人もそれに感化され、自発的に動くようになるのです。この
WHYは別の言葉で言えば「志」であり、「大義」です。それを
欠いた時、リーダーシップは単なる「操作」となり下がってしまう
のです。

そういう意味で、本書のタイトルにあるように、何をするにもまず
は「WHYから始める」ことは仕事や経営、そして何よりも人生に
おいて重要だと思います。でも、それは口で言うほど簡単ではなく、
そうするためには常に深く自分を見つめる必要があるし、さらに
それをずっと忘れずに自分の中に持ち続けるためにはそれなりの
自己規律も必要となるでしょう。しかし、その見返りは本書が説く
ように非常に大きなものがあるはずです。まずはぜひ本書を読んで
いただき、なぜWHYから始める必要があるのかについてインス
パイアされるところから始めてみるのもいいかもしれませんね。

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4.編集後記

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先日、中国で初めて「アクティブ・ホープ・ワークショップ」を
実施しました。上海郊外にある陽澄湖というカニの養殖で有名な
湖のほとりにあるホテルで12名の参加者とともに、深く豊かな
3日間を過ごすことができました。

日中両国は現在、特に政治のレベルにおいて必ずしも良好な関係
にあるとは言えません。しかし、お互いがそれぞれの文化や歴史
を尊重し、本物の誇りに基づいた関係性を築くことができたら、
東アジアがこれからの世界においてリーダーシップを発揮していく
ことが可能だし、それが求められているのではないかと私は考えて
います。

そして、それこそが私が昨年から中国でリーダーシップ・プロ
グラムを行い、今回アクティブ・ホープを行うことになった元に
あるWHYなのです。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
いただいた方にお送りしています。

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よく生きる通信Vol.21 「続けるためのしくみをつくる」

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         ★よく生きる通信 vol.21★
           2016年1月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

新年が明けて早1ヶ月が経とうとしていますが、皆さんいかが
お過ごしでしょうか?

私は昨年に引き続き、今年も「世界青年の船」事業に関わっており、
このメルマガが発行される頃には洋上にいることと思います。

では、「よく生きる通信」Vol.21をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「継続するためのしくみをつくる」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/3/12-13 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/4/15-17  アクティブ・ホープ・ワークショップ(長野・女神山)
・2016/4/22-5/6  よく生きるツアー(イギリス)
・2016/5/14-15 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/7/23-24  天職創造セミナー(神奈川・藤野)
3.よく生きるリソース:「スタンフォードの自分を変える教室」
ケリー・マクゴニガル著(大和書房)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「続けるためのしくみをつくる」

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皆さんは何かを続けたいと思いながら、なかなか続かないという
経験をしたことはありませんか?かくいう私も一念発起して始めた
ことがいつのまにか負担になり、ついには断念してしまったことが
何度もあります。昨秋、時間的にも精神的にも多少の余裕ができた
ので、それまでやろうやろうと思いながらやれていなかったことを
いくつか始めることにしたのですが、その際に「三日坊主」になら
ないよう、あるしくみを用意することにしました。これがなかなか
うまくいっていて、約4ヶ月を経た今でも続いているので、今回
のコラムではそのことを取り上げてみようと思います。

その「あるしくみ」とはコーチングです。つまり、自分が続けたい
と思っていることにテーマを絞ってコーチをつけることにしたの
です。1つは中国語。そして、もう1つは読み書きです。ちなみに、
「読み書き」というのは、読書量を増やしたいというのと、自分の
本を書きたいという2つのことを合わせたものです。そんなことに
いちいちコーチをつけなくても、と思われるかもしれませんが、
実際にやってみて、その効果は自分が想像していた以上に大きな
ものでした。

中国語の方は、始めてから2ヶ月ほど経った頃に、リーダーシップ・
プログラムを通じて関わりのあった中国の人たちに対し中国語で
自己紹介ができるまでになりました。また、読書の方では、それ
までほとんど読むことがなかった新聞を毎朝欠かさずに読むように
なった上、3ヶ月間で日本語と英語の本を合わせて10冊以上読む
ことができました。よく本を読まれる方にとって、これは何という
こともない数字かもしれませんが、私にとっては快挙と言えるもの
です。執筆についても、先日ある出版社に企画書を提出するところ
まできました。

では、コーチングで何をやっているのか?基本的には進捗状況の
確認と行動計画の立案の2つです。もちろん、それ以外にもいろ
いろと話しますが、定期的にコーチングの時間を持つことによって
自分がやりたいと思っていることを着実にやるための「意識づけ」
ができていることが一番のポイントだと思います。この意識づけを
徹底するために、コーチングの時間だけでなく、日々何をやったか
をメールで報告するということもやっています。今日はどんな本を
何ページ読んだか、今日は中国語をどれくらい勉強したかなどを
1日1回簡単なメールで報告するのです(もちろん、報告できない
こともありますが、、、)。そうした意識づけを行うことによって、
今まで何気なく過ごしていた隙間の時間などでも、「あ、この隙に
あの本を少し読もう」と思ったりできるわけです。

正直に言えば、私はこれまである特定のテーマに関して目に見える
成果を上げることに焦点を当てたコーチングを軽く見てきました。
コーチングでは、もっと人生全体に関わるようなテーマについて
深い気づきを得ることに焦点を当てるべきだと思っていました。
したがって、たとえばダイエットをテーマとしたコーチングなどに
ついての話を聞くと、薄っぺらさを感じて嫌悪感すら抱いたもの
です。しかし、今回自分自身が自発的にそのようなコーチングを
体験してみて、改めてコーチングの意識づけに対する効果を実感
することができました。

もちろん、これは今回受けている中国語や読み書きのコーチングが
「薄っぺらい」と言っているわけではありません。幸いなことに、
それぞれその分野において活躍している人にお願いすることができ、
単なる進捗状況の報告や行動計画の立案を超えた貴重なアドバイス
をいただいたりしていることもここまで続けられている大きな理由
だと思います。さらに、こうして意識づけの習慣が身についてきた
ことで他のテーマに関しても副次効果が表れてきています。たとえ
ば、食習慣を変えることで体質改善を図るということに関しても
この意識づけが波及し、この4ヶ月間で10キロ近くも体重を落とす
ことに成功しました。

何も自慢話をしたくて私はこれらのことを書いているわけではあり
ません。私がこれらのことをすべて自力でやろうとしていたら、
おそらくとっくの昔に挫折していたことと思います。自分自身も
長年コーチングに携わりながら、今さらこんなことを言うのは恥ず
かしいのですが、まさに「コーチング恐るべし」です。もちろん、
コーチング以外にも選択肢はいろいろあるとは思いますが、何かを
続けようと思った時にそれをしっかり意識づけられるようなしくみ
を用意することが必要なのではないかと思います。そして、それは
自分の創りたい未来を創るための投資なのだと思います。
(榎本 英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【天職創造セミナー】<定員間近!>
・日程:2016年3月12日(土)・13日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/340746/

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】<キャンセル待ち>
・日程:2016年4月15日(金)~17日(日)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 
・定員:24名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/340987/

【よく生きるツアー@イギリス】
・日程:2016年4月22日(金)~5月6日(金)
・イギリスのフィンドホーンおよびトットネス
・参加費:390,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/352767/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年5月14日(土)・15日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357669/

【天職創造セミナー】
・日程:2016年7月23日(土)・24日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/357670/

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3.よく生きるリソース 「スタンフォードの自分を変える教室」
   ケリー・マクゴニガル著(大和書房)

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著者はアメリカの名門スタンフォード大学で健康心理学を教える
教授で、どうやったら人は健康や幸せ、成功、そして充実した人間
関係を手にすることができるのかについての実践的な講義は絶大な
人気を博しています。意志力をテーマにして書かれた本書も世界中
でベストセラーになったので、読まれた方もいらっしゃるのでは
ないでしょうか。

本書のおもしろいところは、心理学だけでなく、神経科学や医学の
最新の研究を引用することで、「意志力」や「自制心」といった
目に見えない力について科学的に説明しているところです。たと
えば、他の動物に比べて脳の前頭前皮質が格段に発達したことで、
返って人間は自制心を失いやすくなったという話はまさに「目から
鱗」でした。以下、そのことを少し説明してみましょう。

ある研究において、人間とチンパンジーにおいしそうなおやつを
見せ、今食べるのだったら2個しか食べられないけど、2分待てば
6個食べられると伝えたところ、7割以上のチンパンジーが2分
待ったのに対し、人間は2割も待てなかったというのです。理性的
に考えれば、どちらが得かすぐにわかりそうだし、人間の方が
チンパンジーよりも理性で劣っているわけではないにもかかわらず、
これほど決定的な違いが生まれるのはなぜなのか?それは、前頭
前皮質が発達したおかげで、人間には未来を予測「しようとする」
能力が身についたのですが、その未来がつねに予測「できる」とは
限らないため、ちょっと待ってより大きな報酬を手にするより、
目の前に置かれた報酬を確実に手にする方を選ぶ傾向がある、
というのです。行動経済学では、この現象を「遅延による価値割引」
と言うそうですが、報酬が時間的あるいは距離的に離れたところに
ある場合、その価値は目の前にあるものに比べて著しく低く見えて
しまうのだそうです。

このように、生物学的により進化しているはずの人間の方が自制心
を失いやすくなるとは何とも皮肉なことです。これが単におやつの
話ならば笑い話で済みますが、気候変動やエネルギー資源の枯渇と
いった将来的な危機を顧みずに、湯水のように化石燃料を使って
しまうのも同じ現象がなせる業だと言われるとまったく笑えなく
なってしまいます。でも、なぜ人間がそういう行動をとるかが
わかれば、対処のしようがあります。上記の例で言えば、何かを
したいと思った時にとりあえず10分待ってみるとか、逆に待つ
ことで将来得られるであろう報酬をまざまざと想像してみる、と
いったことです。

本書ではこうした人間の意志力に関わる問題を科学的に解き明かし、
それに対する具体的な対処法を挙げることで、私たちが心から本当
に望む結果を得るために必要な意志力や自制心を養う道筋をいくつ
も提示しています。これらのことは、今号のコラムで取り上げた
「続けるためのしくみをつくる」という観点からも役立つことが
大いにありました。もし何かを続けたいけれどなかなか続かないと
いう人には、本書は参考になるかもしれません。

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4.編集後記

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冒頭にも書きましたように、今年も昨年に引き続き、「世界青年の
船」事業に関わっています。今年は昨年よりもプログラムが長く
なり、1月20日にスタートして3月1日まで続きます。その間、1月
28日から2月29日までは「にっぽん丸」という船に乗って、日本を
はじめ、世界11ヶ国から集まった18歳から30歳までの総勢240名
ほどの若者たちとともにインドとスリランカを往復してきます。

私はアドバイザーという立場で、主に「リーダーシップ」について
のセミナーを担当しますが、前回もそうであったように、今回も
与えるより与えられることの方がきっと多いのではないかと楽しみ
にしています。

その間、限られた通信環境に置かれるため、連絡が取りづらくなる
と思いますが、ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

※この通信は、これまでよく生きる研究所のイベントにご参加
いただいた方、およびホームページ等を通じて読者登録をして
いただいた方にお送りしています。

※この通信のバックナンバーをご覧になりたい方は、以下のリンク
からご覧いただくことができます。
http://yokuikiru-kenkyusho.blogspot.jp/

なお、万が一このようなメルマガが送られてくるお心当たりがない方、
あるいは心当たりはあるが購読を希望しないという方は、恐れ入り
ますが、以下のリンクをクリックして購読を解除していただければ
幸いです。
http://accessmail.jp/z.php3?pk=UIdxdBdi&em=info@yokuikiru.jp

お問い合わせ:info@yokuikiru.jp

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