2021年8月28日土曜日

よく生きる通信Vol.41 「人生にスペースをつくる」

 

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         よく生きる通信 vol.41

             20218月号

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皆さん、こんにちは。

よく生きる研究所の榎本英剛です。

 

ここのところ全国的に不安定な気候が続いていますが、皆さんは

いかがお過ごしでしょうか?

 

さて、突然ではありますが、来月からしばらく対外的な活動をすべて

お休みし、しばらく研究活動に専念させていただくことになったため、

このメルマガもその間は休刊とさせていただくことになりました。

 

それでは、当面最後となる「よく生きる通信」をお届けします。

ぜひお目通しください♪

 

★今号のContents

 

1.よく生きるコラム:「人生にスペースをつくる」

2.よく生きるリソース:「コンパッション」

ジョアン・ハリファックス著(英治出版)

3.編集後記

 

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1.よく生きるコラム 「人生にスペースをつくる」

 

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冒頭で書きましたように、私は来月からしばらく対外的な活動を

お休みし、しばらく研究活動に専念させていただくことになりました

が、このようにそれまでやっていた活動をすべて手放し、その時に

自分の中にある大きな問いに向き合う時間を取るのは、実は今回が

初めてではありません。大きなところでは、20代の終わりにそれまで

勤めていた会社を辞め、アメリカに留学した時。そして、30代の

終わりに自分が立ち上げた会社の経営から離れ、スコットランドに

あるエコビレッジに家族で移住した時がそれに当たります。そして、

その度にそれこそ人生を変えるような大きな出会いや気づきを得て、

それをきっかけに人生を進化させてきました。こうした経験から、

人生において、時折こうして意図的にスペースをつくることが必要だ

ということをつくづく実感しています。

 

スペースというのは、日本語で言うと「間」に当たり、日本人が

伝統的に大切にしてきたものだと思いますが、なぜか現代において

はその必要性がどこかに置き忘れられているような気がします。

それどころか、手帳のスケジュール帳を見た時にそこに間、すなわち

空白があるとむしろ不安になってしまうくらい、必死に間を埋めよう

としているような感さえあります。そうやって忙しくしていると、

何か大事なことをやっているような感じがするかもしれませんが、

結局は毎日同じようなことの繰り返しで、人生が進化しているという

ほどの実感はなかなか得られにくいのではないでしょうか?

 

私が「スペース」と言う時、まずは時間的なスペースを指しています

が、時間さえ取ればいいというものではありません。その時間を

使って何をするかということが大事になるわけですが、それが人生に

必要な間をつくるためには、まずもって自分とつながるということが

必要になります。自分とつながるというのは、たとえば、自分が本当

に感じていることは何か、本当に大事にしたいことは何か、本当に

やりたいことは何かといったことを深く感じたり、考えたりすること

を意味しています。こういったことは、日々を忙しく過ごしていると

なかなか感じたり、考えたりすることができません。したがって、

意図的にそういう時間をつくり出さない限り、日々起きる出来事に

ただ流されるだけの人生になってしまう恐れがあります。欧米では

「リトリート」と言って、意図的に日常から離れて自分とつながる

時間を取る人たちやそのための場やプログラムを提供する人たちが

多くいます。

 

以上のようなことは、週末や数週間の長期休暇を使って実施すること

も可能ですが、本当に人生を変えるようなスペースはそんな短期間

ではつくれません。そして、人生を変えるようなスペースには、その

前提として「大きな問い」が必要だと私は考えています。私の場合、

20代にアメリカへ留学した時は「人はどうしたら生き生きと仕事が

できるのだろうか?」という問いがありましたし、30代にイギリスへ

移住した時は「人の可能性を引き出す社会とはどのようなものだろう

か?」という問いがありました。そして、今回自分の中にある問いは

「人類がその本領を発揮し、次のステージに進化するにはどうしたら

いいのだろうか?」というものです。この問いの背景には、今人類が

直面しているコロナウイルスの感染爆発という危機、気候変動に伴う

様々な危機、強権的な政治の台頭による人道的な危機といった多くの

危機は、元を辿れば人類のエゴに起因していると個人的には感じて

いて、これらの危機を乗り越えるためには人類がエゴを乗り越え、

次のステージに進化する必要があるのではないかという問題意識が

あります。そして、こうした大きな問いと向き合うためには、それに

見合った大きな器=スペースが必要だと考えているわけです。

 

さて、今回つくるスペースの中からどんな答えが出てくるのか、

今はまったくわかりませんが、まずはスペースをつくること自体に

コミットしたいと思います。

(榎本英剛)

 

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2.よく生きるリソース 「コンパッション」 

ジョアン・ハリファックス著 (英治出版)

 

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著者のジョアン・ハリファックス老師は禅僧にして仏教指導者、

そして社会活動家でもあり、また人類学者でもあるという多様な顔を

持っています。本書は彼女がこれまでの活動を通して見聞きし、

感じてきたことに基づいて、特に対人支援の活動に関わる人たちが

自らを犠牲にすることなく、人の役に立つにはどうしたらいいかに

ついて著した渾身の一冊です。

 

著者は他者を支援する時に、その支援者が自己犠牲に陥ることなく、

必要な支援を提供するために身につけるべき力として本書のタイトル

である「コンパッション」を挙げています。コンパッションとは

英語で「慈悲」とか「思いやり」を意味する言葉ですが、著者は

それを「人がうまれつき持つ“自分や相手を深く理解し、役に立ち

たい”という純粋な想いであり、自分自身や相手と“共にいる”力」

であると定義しています。そして、このコンパッションをさらに

細かく見ていくと、「利他性」「共感」「誠実」「敬意」「関与」

という5つの資質に分類することができ、著者はこれらを「エッジ

ステート」と呼んでいます。ここで「エッジ」というのは「崖」の

ことで、これらの資質が健全な形で発揮されれば、あたかも崖の上

から遠くの景色が見渡せるように豊かな可能性を見出すことができる

けれども、ひとたびその崖から足を踏み外してしまうと、その資質が

持つ負の側面が立ち現れて、自分や相手に害を与えてしまう可能性が

あると著者は述べています。本書において、著者はこれら5つの

エッジステートとそれらの負の側面について自身のストーリーや

事例を挙げながら詳しく解説するとともに、負の側面に陥った時に

どうしたらいいかについても具体的な提案をしています。

 

私が本書を読んで感じたのは、コンパッションというのは、本書の

日本語の副題に「状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、

“共にいる”力」と書かれているように、何も対人支援の活動に

携わる人たちだけに限らず、今まさにコロナウイルスの感染爆発や

気候危機、人道危機といった複合的な危機に直面している私たち

人類全員に必要な力であり、その危機の大きさや多さに圧倒される

ことなく、正気を保ちながら、それらを乗り越えるために自分が今

できることを1つずつやっていく上で欠かせない力ではないのか

ということです。そして、来月から人生にスペースをつくり、大きな

問いに向き合う旅に出る自分にとっても、このコンパッションが

おそらくとても大きな役割を果たすことになるだろうという予感が

しています。

 

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3.編集後記

 

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今年の3月に出版された『僕らが変わればまちが変わり、まちが

変われば世界が変わる』という新著の出版記念イベントを4月から

全国で開催してきましたが、先日ようやく予定していたすべての

イベントを完了することができました。その数全部で55回、参加者の

人数は約1100人となりました。

 

我ながらよくこれだけやったと思いますが、それ以外の活動も含めて

自分が今やれることをやり切ったことで、憂いなく来月からの研究

活動に専念できそうです。このメルマガもしばらく休刊となりますが、

またいずれ再開できればと思っています。ここまで長らくお付き合い

いただきまして、本当にありがとうございました!

 

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

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