2016年7月26日火曜日

よく生きる通信Vol.25 「正しい問いを問う」

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         ★よく生きる通信 vol.25★
           2016年7月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

ここ藤野では、ここ数日梅雨の割には涼しく過ごしやすい日が続い
ていますが、皆さんのお住まいのところはいかがでしょうか?

今年の夏は猛暑になるという噂を聞いていたので、おひさまも
ちょっと小休止という感じなのでしょうか。

さて、「よく生きる通信」Vol.25をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「正しい問いを問う」
2.よく生きるインフォメーション:
・2016/9/4 夢を変え、ゲームを変え、世界を変える(東京・神田)
・2016/9/10-11 天職創造セミナー(神奈川・藤野)
・2016/10/8-10 アクティブ・ホープ・ワークショップ(長野・女神山)
・2016/10/15 藤野の学校(神奈川・藤野)
3.よく生きるリソース:「悩む力」「続・悩む力」
姜尚中著(集英社新書)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「正しい問いを問う」

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私はよく生きる上で欠かせないことの1つに「正しい問いを問う」
ということがあると考えています。ここで「正しい問い」という
のは、必ずしも誰にでも通用するような唯一絶対の問いという意味
ではなく、その人にとって役に立つ、その人を力づけるような問い
を指しています。そして、それは頭で考えて出てくるというより、
知らないうちに自分の中から自然に湧いてくるようなもので、
すぐには消えず、ずっと心のどこかに引っかかっているような
問いです。

たとえば、私の場合、子どもの頃からサラリーマンとして働いて
いた父親の姿を見ながら、「人はなぜ働くのか?」「仕事とは
そもそも何なのか?」という問いを抱いていました。そして、
その問いは自分が大人になって会社で働くようになってからも
消えず、30代前半でアメリカに留学した際、まさに「仕事」を
テーマに研究し、それで修士論文を書きました。さらに、「天職
創造セミナー」という上記のような問いについて考える研修を
開発し、提供するようになり、一昨年にはついに『本当の仕事』
という本まで上梓するに至りました。このように、正しい問いを
抱き、それを問い続けることはその人の人生を動かし、形づくる
パワーを持っていると私は考えています。

ところが、現代社会においては「正しい答え」を求める風潮が
あまりに強く、学校教育においても、仕事においても、いかに
正しい答えを早く見つけるかということが評価されるしくみに
なっているため、どうしても問いを抱き続けるのが難しい傾向が
あります。特に、上記のような「正しい問い」は、すぐには答え
が出てこないようなものである場合が多いので、いかにそうした
問いと「ともにいる」ことができるかが大切になってきます。
というのも、正しい問いはワインのようなもので、熟せば熟す
ほど味わいのある答えが出てくるからです。

ところが、「早く答えを見つけなければ」というプレッシャーを
感じていると、なかなかこうした問いを問うこと自体をしなく
なりますし、仮に問うたとしても、その答えを安易に外に求めて
しまったり、表面的な答えで満足してしまったりしてしまいがち
です。そのようなことを続けていると、人生自体がだんだんと
味気のないものになっていってしまうでしょう。

そうならないためには、まず答えよりも問いに重きを置くことが
必要となります。現代のように、答えを極端に重視する世の中に
おいては、問いの価値が失われ、問いを抱くこと自体がいけない
ことだという考えさえ見受けられます。そうではなく、問いを抱く
こと、そしてそれを問い続けることにこそ価値があるんだという
考え方に転換していかなければならないと私は思います。こうした
「答え重視の生き方」から「問い重視の生き方」への転換は、口で
言うほど簡単ではないかもしれませんが、もしそれができれば、
間違いなく人生に幅と奥行きをもたらしてくれるでしょう。

このコラムを締めくくりにあたり、私にこのことを教えてくれた
大好きな文章を紹介したいと思います。これはオーストリアの詩人
ライナー・マリア・リルケが書いた『若き詩人への手紙』の中に
収められている一節です。

「私はできるだけあなたにお願いしておきたいのです。あなたの
心の中の未解決なものすべてに対して忍耐を持たれることを。
そうして問い自身を、例えば閉ざされた部屋のように、あるいは
非常に未知な言語で書かれた書物のように、愛されることを。
すぐ答えを捜さないでください。あなたはまだそれを自ら生きて
おいでにならないのだから、与えられることはないのです。
すべてを生きるということこそ、しかし大切なのです。今は
あなたは問いを生きてください。そうすればあなたは次第に、
それと気づくことなく、ある遥かな日に、答えの中へ生きて
行かれることになりましょう」

さて、あなたは今どんな問いを生きていますか?
(榎本 英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

【天職創造セミナー】
・日程:2016年9月10日(土)・11日(日)
・会場:神奈川県・藤野 無形の家
・参加費:45,000円 ユース割引(30歳未満)30,000円
・定員:18名
・詳細・お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382394/

【アクティブ・ホープ・ワークショップ】<定員間近!>
・日程:2016年10月8日(土)~10日(月・祝)
・会場:長野県・上田 女神山ライフセンター
・参加費:65,000円 
・定員:24名
・詳細〓お申し込み:http://kokucheese.com/event/index/382396/

<<その他、榎本が登壇予定の公開イベント>>

【夢を変え、ゲームを変え、世界を変える
 ~個の力を集団の力に変える1日~】<NEW!>
・日程:2016年9月4日(日)  10:00-16:30
・会場:東京・神田 ベルサール神田
・参加費:一般28,000円 ユース(25歳未満)18,000円 
・主催:NPO法人セブン・ジェネレーションズ
・詳細・お申し込み:
http://www.sevengenerations.or.jp/#!change-the-world-2016/b5kax

【藤野の学校 ~境界の仕事&起業コース】<NEW!>
・日程:2016年10月15日(土)13:00-16:00
・会場:神奈川・藤野 牧郷ラボ
・参加費:8,000円
・定員:25名
・主催:藤野の学校事務局
・詳細・お申し込み:
https://www.facebook.com/events/135038076902189/

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3.よく生きるリソース 「悩む力」「続・悩む力」
  姜尚中著(集英社新書)

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今回ご紹介したいのは、2008年に出版され、ベストセラーになった
『悩む力』と東日本大震災後に出版されたその続編。著者は、よく
メディアにも登場されるのでご存知の方も多いと思いますが、東京
大学教授で政治学者の姜尚中氏。実は、最初の本が出た時からその
タイトルが気になっていたにもかかわらず、最近までなかなか読む
機会がなかったのですが、今回の「よく生きるコラム」のテーマと
関係しそうだという予感もあり、続編も含めて一気に読みました。

通常、「悩む」というのは、あまり肯定的にとらえられることはあり
ませんが、著者は「力」という言葉を使っていることからもわかる
ように、それを1つの能力、あるいは資質としてとらえています。
「悩む」とは言い換えると、「すぐに答えが出ないような、でも重要
な問いに対して、自分なりの答えが出てくるまで問い続ける」という
ことであり、コラムで用いた表現を使えば「問いとともにいる」、
あるいはリルケの言う「問いを生きる」ということだと思います。

本書を読んでおもしろかったのは、この「悩む力」がなぜ求めら
れるようになったかを、今から約100年前の時代を生きた日本の
文豪、夏目漱石とドイツの社会学者、マックス・ウエーバーらの
考え方を紹介しながら、大きな時代の流れの中で説明している点
です。すなわち、産業革命前夜に科学が宗教に代わって世界の
中心的な価値観を形成するようになって、それまで問う必要が
なかった「自分とは何者か?」とか「自分は何のために生きる
のか?」といった問いに対して、1人ひとりが答えを出さなく
てはいけなくなった、つまり悩まなくてはいけなくなったという
のです。

さらに、資本主義の発展によって、人間が道具化・商品化される
ようになったことで、ますますこうした問いを問うことが困難に
なってきていると著者は指摘します。そして、こういう時代状況
の中で私たちがこうした問いにそれぞれ答えを見出そうとする
のは、かなり過酷なことであるとも主張しています。現代の日本
において、うつ病を患う人や自らの命を絶つ人が後を絶たない
のも、このことと無関係ではない。そう言うのです。

そういう過酷な宿命を引き受けた上で、でも私たちは悩みながら、
それぞれの答えを見出していくしかない、というのが著者の結論
です。だからこそ、「悩む力」が必要だと。確かに、すぐに答えが
出ないような問いに向き合い続けるには力が必要だと私も思います。
そして、その力はただ単によく生きるということだけでなく、ある
種のサバイバル能力としても求められているということを、私は
本書を読んで痛感させられました。

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4.編集後記

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6月27日から7月4日にかけての約1週間、米サンフランシスコの
郊外にあるリバーズベンド・リトリートセンターという自然豊かな
場所で、私の人生の師の一人であるジョアンナ・メイシー氏による
「つながりを取り戻すワーク」の集中プログラムを実施しました。

日本から来た36名の参加者とともに、自分や他者、世界や地球、
そして過去や未来とも深くつながる体験をすることができ、
まさに揺るぎない希望を感じる時間となりました。88歳に
なったジョアンナもかつて見たことがないくらいにパワフル
で、地球とつながって生きることがいかにその人に力強さを
与えるかを改めて感じた貴重な機会となりました。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

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