2021年8月28日土曜日

よく生きる通信Vol.41 「人生にスペースをつくる」

 

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         よく生きる通信 vol.41

             20218月号

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皆さん、こんにちは。

よく生きる研究所の榎本英剛です。

 

ここのところ全国的に不安定な気候が続いていますが、皆さんは

いかがお過ごしでしょうか?

 

さて、突然ではありますが、来月からしばらく対外的な活動をすべて

お休みし、しばらく研究活動に専念させていただくことになったため、

このメルマガもその間は休刊とさせていただくことになりました。

 

それでは、当面最後となる「よく生きる通信」をお届けします。

ぜひお目通しください♪

 

★今号のContents

 

1.よく生きるコラム:「人生にスペースをつくる」

2.よく生きるリソース:「コンパッション」

ジョアン・ハリファックス著(英治出版)

3.編集後記

 

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1.よく生きるコラム 「人生にスペースをつくる」

 

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冒頭で書きましたように、私は来月からしばらく対外的な活動を

お休みし、しばらく研究活動に専念させていただくことになりました

が、このようにそれまでやっていた活動をすべて手放し、その時に

自分の中にある大きな問いに向き合う時間を取るのは、実は今回が

初めてではありません。大きなところでは、20代の終わりにそれまで

勤めていた会社を辞め、アメリカに留学した時。そして、30代の

終わりに自分が立ち上げた会社の経営から離れ、スコットランドに

あるエコビレッジに家族で移住した時がそれに当たります。そして、

その度にそれこそ人生を変えるような大きな出会いや気づきを得て、

それをきっかけに人生を進化させてきました。こうした経験から、

人生において、時折こうして意図的にスペースをつくることが必要だ

ということをつくづく実感しています。

 

スペースというのは、日本語で言うと「間」に当たり、日本人が

伝統的に大切にしてきたものだと思いますが、なぜか現代において

はその必要性がどこかに置き忘れられているような気がします。

それどころか、手帳のスケジュール帳を見た時にそこに間、すなわち

空白があるとむしろ不安になってしまうくらい、必死に間を埋めよう

としているような感さえあります。そうやって忙しくしていると、

何か大事なことをやっているような感じがするかもしれませんが、

結局は毎日同じようなことの繰り返しで、人生が進化しているという

ほどの実感はなかなか得られにくいのではないでしょうか?

 

私が「スペース」と言う時、まずは時間的なスペースを指しています

が、時間さえ取ればいいというものではありません。その時間を

使って何をするかということが大事になるわけですが、それが人生に

必要な間をつくるためには、まずもって自分とつながるということが

必要になります。自分とつながるというのは、たとえば、自分が本当

に感じていることは何か、本当に大事にしたいことは何か、本当に

やりたいことは何かといったことを深く感じたり、考えたりすること

を意味しています。こういったことは、日々を忙しく過ごしていると

なかなか感じたり、考えたりすることができません。したがって、

意図的にそういう時間をつくり出さない限り、日々起きる出来事に

ただ流されるだけの人生になってしまう恐れがあります。欧米では

「リトリート」と言って、意図的に日常から離れて自分とつながる

時間を取る人たちやそのための場やプログラムを提供する人たちが

多くいます。

 

以上のようなことは、週末や数週間の長期休暇を使って実施すること

も可能ですが、本当に人生を変えるようなスペースはそんな短期間

ではつくれません。そして、人生を変えるようなスペースには、その

前提として「大きな問い」が必要だと私は考えています。私の場合、

20代にアメリカへ留学した時は「人はどうしたら生き生きと仕事が

できるのだろうか?」という問いがありましたし、30代にイギリスへ

移住した時は「人の可能性を引き出す社会とはどのようなものだろう

か?」という問いがありました。そして、今回自分の中にある問いは

「人類がその本領を発揮し、次のステージに進化するにはどうしたら

いいのだろうか?」というものです。この問いの背景には、今人類が

直面しているコロナウイルスの感染爆発という危機、気候変動に伴う

様々な危機、強権的な政治の台頭による人道的な危機といった多くの

危機は、元を辿れば人類のエゴに起因していると個人的には感じて

いて、これらの危機を乗り越えるためには人類がエゴを乗り越え、

次のステージに進化する必要があるのではないかという問題意識が

あります。そして、こうした大きな問いと向き合うためには、それに

見合った大きな器=スペースが必要だと考えているわけです。

 

さて、今回つくるスペースの中からどんな答えが出てくるのか、

今はまったくわかりませんが、まずはスペースをつくること自体に

コミットしたいと思います。

(榎本英剛)

 

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2.よく生きるリソース 「コンパッション」 

ジョアン・ハリファックス著 (英治出版)

 

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著者のジョアン・ハリファックス老師は禅僧にして仏教指導者、

そして社会活動家でもあり、また人類学者でもあるという多様な顔を

持っています。本書は彼女がこれまでの活動を通して見聞きし、

感じてきたことに基づいて、特に対人支援の活動に関わる人たちが

自らを犠牲にすることなく、人の役に立つにはどうしたらいいかに

ついて著した渾身の一冊です。

 

著者は他者を支援する時に、その支援者が自己犠牲に陥ることなく、

必要な支援を提供するために身につけるべき力として本書のタイトル

である「コンパッション」を挙げています。コンパッションとは

英語で「慈悲」とか「思いやり」を意味する言葉ですが、著者は

それを「人がうまれつき持つ“自分や相手を深く理解し、役に立ち

たい”という純粋な想いであり、自分自身や相手と“共にいる”力」

であると定義しています。そして、このコンパッションをさらに

細かく見ていくと、「利他性」「共感」「誠実」「敬意」「関与」

という5つの資質に分類することができ、著者はこれらを「エッジ

ステート」と呼んでいます。ここで「エッジ」というのは「崖」の

ことで、これらの資質が健全な形で発揮されれば、あたかも崖の上

から遠くの景色が見渡せるように豊かな可能性を見出すことができる

けれども、ひとたびその崖から足を踏み外してしまうと、その資質が

持つ負の側面が立ち現れて、自分や相手に害を与えてしまう可能性が

あると著者は述べています。本書において、著者はこれら5つの

エッジステートとそれらの負の側面について自身のストーリーや

事例を挙げながら詳しく解説するとともに、負の側面に陥った時に

どうしたらいいかについても具体的な提案をしています。

 

私が本書を読んで感じたのは、コンパッションというのは、本書の

日本語の副題に「状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、

“共にいる”力」と書かれているように、何も対人支援の活動に

携わる人たちだけに限らず、今まさにコロナウイルスの感染爆発や

気候危機、人道危機といった複合的な危機に直面している私たち

人類全員に必要な力であり、その危機の大きさや多さに圧倒される

ことなく、正気を保ちながら、それらを乗り越えるために自分が今

できることを1つずつやっていく上で欠かせない力ではないのか

ということです。そして、来月から人生にスペースをつくり、大きな

問いに向き合う旅に出る自分にとっても、このコンパッションが

おそらくとても大きな役割を果たすことになるだろうという予感が

しています。

 

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3.編集後記

 

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今年の3月に出版された『僕らが変わればまちが変わり、まちが

変われば世界が変わる』という新著の出版記念イベントを4月から

全国で開催してきましたが、先日ようやく予定していたすべての

イベントを完了することができました。その数全部で55回、参加者の

人数は約1100人となりました。

 

我ながらよくこれだけやったと思いますが、それ以外の活動も含めて

自分が今やれることをやり切ったことで、憂いなく来月からの研究

活動に専念できそうです。このメルマガもしばらく休刊となりますが、

またいずれ再開できればと思っています。ここまで長らくお付き合い

いただきまして、本当にありがとうございました!

 

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

2021年2月11日木曜日

よく生きる通信 Vol.40 「どこに意識を向けるかが人生の質を決める」

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         ★よく生きる通信 vol.40★
               2021年2月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

前回の配信から4ヶ月以上空いてしまいましたが、皆さんはいかが
お過ごしでしたでしょうか?

私の方はその間、3年前から少しずつ書き溜めてきた本を完成すべく
原稿の執筆作業に追われていましたが、この度ようやくそれを形に
することができました。東日本大震災からちょうど10年となる来月
3月11日に『僕らが変わればまちが変わり、まちが変われば世界が
変わる』というタイトルで出版される予定です。

内容的には、私が現在住んでいる神奈川県の藤野というまちで、この
10年ほど取り組んできた「トランジション・タウン」という、市民の
力で持続可能な地域コミュニティをつくるための市民運動について
まとめたもので、奇しくもコロナ後をどう生きるかについて1つの
方向性を指し示したものとなっています。

なお、この本は今年1月に立ち上がったばかりの新しい出版社から
出されることもあり、その出版費用を捻出するため、購入予約という
形でクラウドファンディングを行うことになりました。来週15日
から以下のサイトで受け付けを開始する予定ですので、ぜひ皆さん
にもご協力いただけたら幸いです。
https://ttfujino.net/book/

それでは、今年最初の「よく生きる通信」をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「意識をどこに向けるかが人生の質を決める」
2.よく生きるインフォメーション:
・天職創造セミナー(オンライン) 3/6-7
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 4/5-7/19
3.よく生きるリソース:「いま、目覚めゆくあなたへ」
マイケル・シンガー著(風雲舎)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「意識をどこに向けるかが人生の質を決める」

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普段、皆さんはどこに意識を向けていらっしゃるでしょうか?そして、
そのことをどれくらい自覚されているでしょうか?

いきなり変な質問から入りましたが、世の中の多くの人は自分が日頃
どこに意識を向けているかについて自覚していません。大体において
人が意識を向けるのは、その時目の前をよぎった面白いものや気に
なるものだと思います。そして、それは目に見えることだけに限られ
ません。その時聞こえてきた他人の話し声や食べている料理の味や
匂い、あるいは肌で感じる蒸し暑さや風の涼しさに意識が向くことも
あるでしょう。また、外側の世界で起きていることだけでなく、
自分の考えや気持ちなど、内側で起きていることに意識が向くことも
あります。対象が何であれ、その時自分の気を引いたことに自覚の
ないまま意識を奪われてしまうのです。

「自覚のないまま意識を奪われる」ということは、そこで意識的な
選択が行われなかったということです。つまり、「そこに意識を
向けよう」という意思のないまま、いわば意識が“ハイジャック”
されてしまったような状態になるわけです。もしも意識が奪われて
いることがその人の人生を豊かにするようなものであればそれもいい
でしょうが、人生の豊かさにはまったくつながらないようなどうでも
いいことや、逆に人生を貧しくするようなことに奪われてしまうこと
も多々あるはずです。こうして私たちの意識は、多くの場合、人生で
起こること、およびそれに対する自分の反応(考えや気持ち)に
振り回されることになるのです。そして、そうやって自分の意識が
振り回されている間は他のことに意識を向けることはできません。
場合によっては、1つのことに何時間も何日も、ひどい時には何年も
意識がとらわれてしまうことさえあります。

10人の話を同時に聞き分けられたという逸話のある聖徳太子であれば
まだしも、普通の人は一度に意識を向けられる対象や範囲は限られて
います。実際には、どの瞬間にも意識を向けられることは無数に
ありますが、意識にはその無数にある対象の中から、限られた数の
対象にスポットライトを当て、さらにズームインするという働きが
あります。そういう意味で、私たちの意識は私たちにとって限られた
貴重な資源であり、リソースだと言えるでしょう。その貴重な資源
である意識が人生で起こることやそれに対する反応に自覚のないまま
振り回されているとしたら、それこそ資源の無駄遣いになってしまい
かねません。

では、どうしたら私たちにとって貴重な資源である意識を有効に使う
ことができるのでしょうか?それには、まず意識が私たちにとって
貴重な資源であることを認識する必要があります。そして、その意識
をどこに向けるかを自分で選ぶことができることを知る必要があり
ます。その上で、以下のような一連の問いを常に自分に対して発する
習慣を身につけるのです。すなわち、「今、自分はどこに意識を
向けているのか?」、「そして、それは自分の人生を豊かにする
ものか?」、「そうでないとすれば、どこに意識を向けるとより人生
は豊かになるのか?」といった問いです。これらの問いかけを通して、
どこに意識を向けるかについてより自覚的な選択ができるようになる
と、人生は自ずとより豊かな方向へと導かれていくことでしょう。
要するに、究極的な言い方をすれば、皆さんの意識をどこに向けるか
が皆さんの人生の質を決めることになるのです。

さて、冒頭の問いを今一度戻りましょう。普段、皆さんはどこに意識
を向けていらっしゃるでしょうか?そして、そのことをどれくらい
自覚されているでしょうか?
(榎本英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催イベント>>

・天職創造セミナー(オンライン)3/6(土)-7(日)
  https://kokucheese.com/event/index/606302/

・本当の自分を生きる塾(オンライン)4/5(月)-7/19(月)
  https://kokucheese.com/event/index/606710/

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3.よく生きるリソース 「いま、目覚めゆくあなたへ」 
マイケル・シンガー著 (風雲舎)

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本書の著者は一昨年の12月に配信した「よく生きる通信」Vol.36の
「よく生きるリソース」で取り上げた『サレンダー』と同じ、
マイケル・シンガー氏。その時もご紹介しましたが、彼はスピリ
チュアル・コミュニティの創始者でありながら、従業員2000人を
超えるIT企業の最高経営責任者を務めるという稀有な経歴を持って
います。その彼が長年にわたる精神的な修行の末に辿り着いた境地
と、どうしたらそうした境地に辿り着けるかについてわかりやすく
解説したのが本書であり、この手の本としては異例とも言える
100万部を超える大ベストセラーとなりました。

原題の『The Untethered Soul』は、直訳すると「束縛されない魂」
となるように、本書のテーマはいかに自分の内外で起こることに
とらわれず自由に生きるかということに尽きると思います。そして、
そのための鍵を握っているのが、実は今回の「よく生きるコラム」
のテーマでもある意識の使い方なのです。著者が本書の中で何度か
使っているたとえでとてもわかりやすいのが、映画館で映画を観る
時に何が起こるかという話です。私たちが映画館で映画を観ている
時、ついそのスクリーン上で起きていることに意識を奪われ、それと
一体化してしまい、それ以外のことにはまったく意識が向かなくなる
ことがよくありますが、日常で私たちの意識に起きているのもこれと
まったく同じ現象だと著者は言います。したがって、自由になるため
には、日々自分の外側や内側で起こることに一体化することなく、
あたかも映画のスクリーンを眺めるかのように客観的に眺められる
ようになることだと言うのです。

著者はさらに、このたとえで言うところの観客、つまりその映画を
観ている存在こそが本当の自分であり、日々自分の人生において展開
するドラマに引きずり込まれることなく、そのドラマで何が起ころう
とすべてそれを楽しめるようになることこそが精神的な修行において
多くの人が目指す悟り、あるいは目覚めと呼ばれる状態であると主張
しています。私自身は残念ながらまだそのような境地にはまったく
達していませんが、今後ぜひ心がけていきたいと思っています。

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4.編集後記

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先日、国家資格である「全国通訳案内士」の資格試験に無事合格した
という通知を受け取りました。合格率が10%を切ると言われるこの
試験ですが、昨年8月にあった筆記試験、そして12月にあった口頭
試験を無事乗り切り、一発で合格することができました。

なぜこの資格にチャレンジしたかと言えば、単純に昔から興味が
あったからというだけなのですが、せっかく取得したので、これから
それをどう活かすかじっくり考えていきたいと思います。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

2020年9月27日日曜日

よく生きる通信Vol.39 「今、本当に必要な”ステイ・ホーム”とは?」

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         ★よく生きる通信 vol.39★
             2020年9月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

ここのところ一気に空気が涼しくなり、すっかり秋らしい天気となり
ましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

実は私の自宅にはエアコンがなく、コロナ禍でオンラインでの仕事が
増えた中にあっては熱中症にならないよう気をつけながらの日々が
長く続いたので、ここに来てようやく一息をついているところです。

さて、「よく生きる通信」の最新号Vol.39をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「今、本当に必要な“ステイ・ホーム”とは?」
2.よく生きるインフォメーション:
・天職創造セミナー(オンライン) 10/24-25
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 11/16-2021/3/1
・天職創造セミナー(オンライン) 12/19-20
3.よく生きるリソース:「つながりを取り戻すワーク」
ジョアンナ・メイシ―&モリ―・ヤング・ブラウン著(サンガ)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「今、本当に必要な“ステイ・ホーム”とは?」

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コロナウイルスの感染状況が拡大基調にあった今年の4月から5月頃、
「ステイ・ホーム」という合い言葉が一時世の中を席捲しました。
そして、ご存知のように、その意味するところは「感染防止のために
極力外出を自粛しよう」ということでした。確かに、感染力が非常に
高いにも関わらず、感染しても症状が出ないケースが多いため、
知らないうちに感染したり、逆に他人にうつしてしまう可能性がある
というこのウイルスの厄介な性質を考えると、なるべく外に出ない
ことが感染の拡大を防止するための最も確実な手段であることは
間違いありませんが、これでは身体のケアにはなっても、決して心の
ケアにはならないのではないかと私は感じていました。

コロナウイルスの感染拡大によって危険に晒されているのは私たちの
身体だけではありません。私たちの心も同じように危険に晒されて
いるのです。より具体的に言えば、「恐れ」というウイルスに感染
するリスクが高いということです。その恐れには「もしうつったら
どうしよう」といったものだけでなく、「この先、自分たちの暮らし
はどうなるんだろう」といったものもあります。人は恐れにとらわ
れると、時に自暴自棄になったり、他人に対して攻撃的になったり、
普段の自分では考えられない態度や行動をとったりします。つまり、
気が気ではなくなり、「正気」を失うのです。また、こうした恐れの
エネルギーは強力なので、本人だけでなく、周りにいる人たちにも、
まさにウイルスのように感染することがあります。

では、こういう状況の中でも正気を保ち、恐れというウイルスに感染
しないためにはどうすればいいのでしょうか?その時に大事になる
のが、私は「ステイ・ホーム」だと考えています。ただし、ここで
言う「ホーム」とは家とか自宅のことではありません。ここで言う
ホームとは、「本来の自分」のことです。つまり、私の言うステイ・
ホームとは「本来の自分から離れず、そこに留まり続ける」という
ことです。では、本来の自分とは何を指しているのでしょうか?
それは、自分を自分たらしめているものであり、最も自分らしい部分
です。それはまた最も輝いている時の自分であり、こうありたいと
思っている自分でもあります。そして、そういう自分から離れず、
そこに留まり続けるためには、自分にとって大事なことをいつも
以上に、かつ意識的に大事にする必要があります。

恐れにさえとらわれなければ、危機的な状況はかえって自分にとって
大事なことを思い出したり、再確認したりする良い機会になること
があります。普段は当たり前だと思って、あまり気にも留めていない
ようなことが、危機に直面すると急にとても貴重なことのように
思えるというのはよくあることです。最近では経済面への配慮から
あまり「ステイ・ホーム」という言葉は耳にしなくなりましたが、
まだ都市部を中心に全国で1日に何百人も新規感染者が出るという
予断を許さない状況が続いていることには変わりがないので、
これからも恐れに振り回されず、本来の自分とつながり続けるという
意味での「ステイ・ホーム」は引き続き継続していきたいものです。
(榎本英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催イベント>>

・天職創造セミナー(オンライン)10/24(土)-25(日)
  https://kokucheese.com/event/index/600182/
・本当の自分を生きる塾(オンライン)11/16(月)-2021/3/1(月)
  https://kokucheese.com/event/index/602072/
・天職創造セミナー(オンライン)12/19(土)-20(日)
  https://kokucheese.com/event/index/600770/

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3.よく生きるリソース 「つながりを取り戻すワーク
~生命への回帰」 
ジョアンナ・メイシ―&モリ―・ヤング・ブラウン著 (サンガ)

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本書は私が人生の師の一人として仰ぐジョアンナ・メイシ―氏が盟友
モリ―・ヤング・ブラウン氏との共著で書いた本で、1998年に初版が
出版されて以来、ジョアンナが開発した「つながりを取り戻すワーク」
を世界中で実践してきた人たちのバイブルとなってきました。今回
出版された日本語版は初版の内容を大幅に改訂・拡充し、2014年に
出版された第2版を翻訳したもので、私と同じく長年ジョアンナに
師事してきた斎藤由香さんが5年の歳月をかけ、心を込めて翻訳した
ものです。

私が監訳を担当し、5年前に出版された『アクティブ・ホープ』が
「つながりを取り戻すワーク」の入門書だとすると、本書はそれと
対をなす実践書と言えるもので、このワークを日本で実践しようと
している人たちにとってはまさに待望の書でした。実際、出版の
約1ヶ月前からスタートした予約販売ですでに初版予定部数にほぼ
達してしまい、出版と同時に重版になったことを見ると、本書に
対する期待がいかに大きかったがわかると思います。

本書のすごいところは、ジョアンナを中心に何十年もかけて蓄積
されてきた様々なワーク(演習)の具体的なやり方など、本来で
あれば知的所有権への配慮から公開されないような智恵が本当に
惜しみなく公開されていることです。このことは、これらの智恵を
広く共有することで、より多くの人が自分や他者、自然、そして
世界とのつながりを取り戻すことが、現在、世界が直面している
未曽有の危機を乗り越えるためにはどうしても必要であるという
ジョアンナの強い信念と深い愛情を表しており、そういう意味で
本書は彼女から世界への「贈り物」であるとも言えるでしょう。

今回のよく生きるコラムで取り上げた「ステイ・ホーム」、すなわち
「恐れにとらわれずに、本来の自分とつながり続ける」を実践する
にあたっても、本書で紹介されている「つながりを取り戻すワーク」
はとても役に立つと思うので、ぜひ読んでいただくだけでなく、
できれば実際に活用していただければと思います。

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4.編集後記

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今月の初めに『つながりを取り戻すワーク~希望への回帰』の
日本語版出版を記念して著者のジョアンナとモリ―にも参加して
もらってのオンライン・イベントが開催されたのですが、光栄にも
そこでお二人をインタビューする大役を仰せつかりました。

その中で、私が投げかけた「危機的な状況の中でも、常に強く
いられるためにはどうしたらいいと思いますか?」という問いに
対して、ジョアンナが「強さというのは、必ずしも一人ひとりの
中にあるのではなく、つながりの中にあるのです」というふうに
答えてくれたのがとても印象的でした。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

2020年7月7日火曜日

よく生きる通信Vol.38 「お金は報酬ではなく、資源である」


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              ★よく生きる通信 vol.38★
               2020年7月号
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皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

今日は七夕の日。コロナウイルスの感染が一日も早く終息し、
再び安心して暮らせる日が来ることを心から祈るばかりですが、
皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

さて、約3ヶ月ぶりとなる「よく生きる通信」をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「お金は報酬ではなく、資源である」
2.よく生きるインフォメーション:
・天職創造セミナー(オンライン) 8/29-30
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 9/23-2021/1/6
3.よく生きるリソース:「ソウル・オブ・マネー」
リン・トゥイスト著(ヒカルランド)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「お金は報酬ではなく、資源である」

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今回のコラムでは前回に引き続き「お金」というテーマについて
取り上げたいと思います。前回は「お金はなくてはならないもの」
という多くの人があたかも絶対的な真実のようにとらえている
考え方が、いかに根拠を欠き、危険性を孕んだものであるかに
ついて語りました。今回は「お金は報酬ではなく、資源である」
というタイトルで、お金を得ることの意味について私が考えて
いることを書いてみたいと思います。

多くの人は、お金とは自分が何らかの仕事をして得られる「対価」
ないしは「報酬」だととらえています。つまり、自分がその仕事
を通じて他者や世の中に対して果たした貢献に対する「ご褒美」
としてお金は与えられるものだと考えているわけです。もちろん、
お金にはこうした報酬的な側面があることは私も否定しませんが、
もしもお金をその側面からしか見ないとしたら、それはどこか
偏りがあるように感じずにはいられません。

こうしたとらえ方をすることの1つの問題点は、お金をどれだけ
得ているかで、その人がどれだけ他者や世の中に対して貢献して
いるかが決まるかのような考え方につながりやすいところです。
つまり、お金を多く得ている人はそれだけ貢献していて、お金を
少ししか得ていない、あるいはまったく得ていない人はあまり
貢献していないというわけです。しかし、それは真実ではありま
せん。通常、収入をまったく得ていない主婦が日々家族に対して
果たしている多大な貢献や同じく無報酬で何らかの奉仕活動に
勤しむボランティアの人たちが果たしている貢献を考えればすぐ
にわかりますが、その人がどれだけ貢献しているかは決してお金
で計ることができません。にも関わらず、お金を単純に報酬と
見る考え方にとらわれていると、お金を十分に得ていない人たち
自身が自分のことを役に立たない存在として低く見てしまうこと
にもなりかねません。

「お金=報酬」という考え方のもう1つの問題点は、お金を自分
がそれまでにやったことの最終的な「結果」あるいは「成果」と
してとらえ、それを自分が使いたいように使う「権利」を得たと
いうふうに考えてしまいがちなところです。そして、この考え方
が前回のコラムで述べた消費者的な考え方の温床となるのです。
それも1つの考え方ではありますが、逆にお金をその人が自らの
人生の目的、すなわち自分はこれをするために生まれてきた
という目的を実現するための「資源」であるととらえることも
できるのではないか、と私は考えています。そして、そう考える
とお金を得ることはそれによって何かを消費する権利を得るだけ
でなく、それを活かして何かを生み出す「責任」が生じるという
ことでもあるのではないかと思うのです。責任という言葉が
重過ぎるようであれば、お金を得ることで自分の人生の目的
に沿って何かを創造する「機会」が与えられたと言ってもいい
かもしれません。

では、お金をあまり得ていない人たちにはそういう機会が与え
られていないのかというと、そんなことはありません。幸いな
ことに、お金は自分の人生の目的に沿って何かを創造するため
の唯一の資源ではありません。実際、それをするための資源は
お金以外にたくさんあります。自分が持つ知識やスキル、経験、
情熱だけでなく、時間や健康、そして人間関係など、それは多岐
にわたります。「お金がないと何もできない」という言葉をよく
耳にしますが、それはその数多ある資源の中の1つに過ぎない
お金を過大視してしまっていることからくるものだと思います。

実際、私はその人が自らの人生の目的に沿って生きるために必要
な資源は必ず与えられると信じています。ただ、それが必ずしも
お金という形を取るとは限らないということです。そして、そう
した資源に気づくためには、まずお金を報酬、すなわち自らの
貢献度合を計る絶対的な尺度としてとらえるのをやめ、それを
含めたあらゆるものが自分の人生の目的に沿って生きられるよう、
資源として常に与えられているということに対して心を開く必要
があると私は思います。さて、あなたの人生には今どのような
資源が与えられているのでしょうか?そして、それらの資源を
活かしてあなたは自らの人生を通して何を創造したいのでしょう
か?
(榎本英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催イベント>>

・天職創造セミナー(オンライン)8/29(土)-30(日)
  https://kokucheese.com/event/index/593387/
・本当の自分を生きる塾(オンライン)9/23(水)-2021/1/6(水)
  https://kokucheese.com/event/index/598271/

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3.よく生きるリソース 「ソウル・オブ・マネー」 
リン・トゥイスト著 (ヒカルランド)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

著者のリン・トゥイストさんは米国のNPOザ・パチャママ・アライ
アンス(The Pachamama Alliance)の共同創設者で、世界的な
ファンドレイザーとして知られています。私はこのNPOが開発した
“Awakening the Dreamer, Changing the Dream Symposium
(日本語名:チェンジ・ザ・ドリーム)”を始めとした持続可能な
未来を創るための各種プログラムを日本に紹介すべくNPO法人
セブン・ジェネレーションズを10年ほど前に仲間と立ち上げた時
から個人的にも親しくさせていただいており、彼女が日本に来日
した時には2回ほど一緒に数百名規模のイベントをファシリテー
ションさせていただいたこともあります。

彼女は世界的なファンドレイザーですが、それは単にお金を集め
るのが上手だからということではなく、お金とは何か、その本質
について深く理解しているからであるということが本書を読むと
よくわかります。彼女は本書の中でお金とは水のようなもので、
それは私たち一人ひとりの意図や意志を運んでくれる道具である
と語っています。つまり、そこに愛を注ぎ込めば愛を運んでくれ
るし、逆に恐れを注ぎ込めば、それは恐れを運びもするものだと
言うのです。そして、現代社会を生きる多くの人たちはお金に
恐れを注ぎ込んでいて、それは「充分には無い」「多ければ多い
方がいい」「それは、そうと決まっている」という、彼女が
「欠乏の神話」と呼ぶ3つの幻想がそうさせていると言います。

では、どうすればいいのか?彼女は「必要なものはすでに充分
ある」という充足思考にシフトすることが鍵を握っていると本書
の中で語っています。今回のコラムで書いたことと結び付ければ、
お金を報酬ととらえるのは、与えられる人と与えられない人が
いるという意味で欠乏思考に基づいており、それを数多ある資源
の1つととらえるのは誰にでもその人が必要とするものが与え
られるという意味で充足思考に基づいていると言うことができる
と思います。

著者のリンさんも本書の最後の方で次のように述べています。
すなわち、充足思考に基づいて自分が心から実現したいことに
コミットした時、「あなたはあなた自身の持つ『本当の財産』に
アクセスします。それらは、金銭的なものだけでなく、あなたの
才能や、人間関係、お金以外の価値も含むのです」と。お金と
自分自身の関係を変え、それによって自分や世界の未来をも変え
たいと願う人たちにとって、本書は必読の1冊であると言えるで
しょう。

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

実は本日7月7日は、私が2000年に設立したCTIジャパン(現・
ウエイクアップ)というコーチングやリーダーシップに関する
プログラムを提供する会社の20回目の設立記念日となります。
すでにその経営からは完全に手を引いていますが、あれからもう
20年の歳月が過ぎたのかと思うとやはり感慨深いものがあります。

本当は先の週末に20周年を記念した盛大なイベントを開催する
ことが予定されていて、私も参加するつもりだったのですが、
このコロナ禍で残念ながら中止となってしまったので、今日は
ワイン片手に1人静かに祝いたいと思います。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

2020年3月16日月曜日

よく生きる通信Vol.37 「お金はなくてはならないものか?」

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         ★よく生きる通信 vol.37★
          2020年3月号
◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、仕事や家庭生活に
大きな影響を受けてらっしゃる方が多いと思いますが、皆さん
お元気にお過ごしでしょうか?

そんな不安定な状況ではありますが、今年初の「よく生きる
通信」をお届けします。ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「お金はなくてはならないものか?」
2.よく生きるインフォメーション:
・本当の自分を生きる塾 (オンライン) 4/8-7/22
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 5/30-31
・よく生きるツアー2020@イギリス 6/5-18
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 8/29-30
3.よく生きるリソース:「happy Money」
本田健著(フォレスト出版)
4.編集後記

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1.よく生きるコラム 「お金はなくてはならないものか?」

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

今回はこれまでこのメルマガで一度も取り上げてこなかった「お金」
について、私が考えていることを書いてみたいと思います。ただ、
このテーマについては、1回のメルマガだけで書き切るのは難しい
ので、何度かに分けて書こうと思います。

お金について書くにあたって、まず最初に考えなければならない
ことは、「はたしてお金はなくてはならないものか?」ということ
です。多くの人は、お金は生きていくために「なくてはならない
もの」と考えています。「お金がなければ、生きていけない(ある
いは、食べていけない)」と誰かが口にするのをこれまで何度耳に
したかわかりません。でも、はたして本当にそうなのでしょうか?

もしそれが本当なら、私たちはとっくの昔に種として絶滅していた
はずです。というのも、いわゆる「お金」というものが発明された
のは人類の歴史の中でも比較的最近のことだからです。では、お金
が発明されるまで、人類はどうやって生きていたのでしょうか?
よく知られているように、お金が発明される以前、人は自分たちが
生きていくために必要なものを基本的に自分たちで生産していたの
です。あるいは、自分が生産したものと他者が生産したものとを
直接交換していたのです。そもそもお金が最初に発明されたのは
この交換作業を不特定多数の人たちの間で円滑に行うためでした。

現代でも土地などの生産手段をある程度持っていれば、その気に
なればお金がほとんどなくても生きていくことはできます。いわ
ゆる「自給自足」的な生き方ですね。では、なぜ「お金がなくては
生きていけない」と多くの人が考えるようになったかというと、
生産活動の分業化が進み、かつ生産活動の比重が食料など生きて
いくために欠かせないものを生産する第1次産業から第3次・
第4次産業へとシフトすることで、生産活動と消費活動の距離が
極端に開いてしまったからだと思います。

人にはもともと生産者的な側面と消費者的な側面がありますが、
現代社会では上記のような理由で消費者的な側面が極大化して
しまっています。そして、消費者的な度合が高くなればなるほど
お金に対する依存度も高くなります。というのも、先に述べた
ように、お金には交換の利便性を高めるという本来の機能がある
ため、お金さえあれば消費者として何でも手に入れることが
できると考えるからです。したがって、「お金はなくてはならない
もの」という考え方は、自分が大部分において消費者であると
いうことを前提とした考え方だと言うことができます。

もちろん、この考え方が間違っているわけではありませんが、
問題はそう考えることで自分の人生がお金に支配され、何事も
お金次第になってしまうことです。「お金がなければ~できない」
とか「お金さえあれば~できる」といった表現は、まさにお金が
すべての前提条件となってしまい、自分の人生がお金に支配され
ていることを示しています。お金について考えるにあたって、
まず「はたしてお金はなくてはならないものか?」という投げ
かけから始めなくてはならないと私が考える理由はここにあり
ます。というのも、まずお金の支配から自由にならなければ、
このテーマに対して歪みのない形で正面から取り組むことができ
ないと思うからです。

もう1つ、「お金はなくてはならないもの」という考え方が孕む
危険性は、そう考えることでお金には幻想的な側面があることを
忘れてしまいがちだという点です。どういうことかというと、
お金そのものに価値があるわけではなく、その価値は特定の地域
内における信用にもとづいた交換価値でしかないということ
です。たとえば、外国に日本円を持って行って、食べ物と交換
したいと思っても、基本的には現地の通貨と両替しない限り
使えません。また、その国が経済的な危機に陥り、その通貨の
信用が失われれば、お金はたちまちただの紙切れに変わって
しまう可能性があります。したがって、銀行にいくら預金の
残高を積み上げても、それが将来にわたって絶対的な安心・安全
を保障してくれるわけではありません。それよりは自らの生産
活動の比重を高めたり、同じ地域内の生産者たちとの関係性を
強化したりした方がよほど保障になると思います。

勘違いしていただきたくないのは、私は決してお金は持っていて
も意味がないとか、全員が昔のような自給自足の生活に戻った方
がいいということを言っているわけではありません。私だって
仕事を通して人様からお金をいただきますし、必要なものを手に
入れるためにお金を使います。私がこのコラムを書いた目的は、
「お金はなくてはならないもの」と盲目的に信じ込むことの
危険性を指摘し、その呪縛から自らを解き放つことの重要性を
訴えることです。さて、皆さんはお金の支配からどれくらい  
自由でいられているでしょうか?
(榎本英剛)

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2.よく生きるインフォメーション

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

・本当の自分を生きる塾(オンライン)4/8(水)-7/22(水)
 https://kokucheese.com/event/index/586951/
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 5/30(土)-31(日)
 https://kokucheese.com/event/index/590435/
・よく生きるツアー2020@イギリス 6/5(金)-18(木)
 https://kokucheese.com/event/index/588552/
・天職創造セミナー(神奈川・藤野)8/29(土)-30(日)
  https://kokucheese.com/event/index/593387/

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3.よく生きるリソース 「happy money」 
本田健著 (フォレスト出版)

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著者の本田健さんは言わずと知れたベストセラー作家で、代表
作の『ユダヤ人大富豪の教え』をはじめ、「お金」をテーマと
した著作をたくさん書かれています。本書は健さんが初めて
英語で書かれた本で、昨年、日本も含め世界25ヶ国で出版
されたものです。私が約2年前に『本当の自分を生きる』を
出版したあかつきには、帯にメッセージを寄せていただくなど
健さんには大変お世話になっていますが、昨年末にあるイベント
でご一緒した時に、光栄にも出版されたばかりの本書を直接
いただきました。

本書の中で健さんはお金にはhappy moneyとunhappy money
の2種類があると主張しています。前者は喜びや感謝とともに
受け取ったり支払ったりしたお金、後者は逆に恐れや不安と
ともに受け取ったり支払ったりしたお金のことです。そして、
どちらのお金の流れに入るかは、その人がこれまでの人生の
中でお金とどのような関係を築いてきたかによると言います。
この関係性を深く見つめることなしに、お金のIQ、すなわち
お金をどう稼ぎ、どう貯め、どう投資し、どう使うかに
ついての知識を高めても、お金のEQ、すなわちお金に対して
どのような感情を抱き、その感情がどこから来ているのかに
ついての認識が低いままなのでどれだけお金を持っていたと
しても、それはunhappy moneyであって、お金に支配された
状態から抜け出すことはできないというわけです。

これはとても重要な指摘だと私は思います。つい私たちは
健さんがお金のIQと呼ぶ、お金の外的・技術的な側面だけを
見てしまいがちで、お金のEQという内的・心理的な側面こそ
が私たちとお金の関係が健全であるかどうかを決定づけている
ことに気がついていません。完全な盲点になっていると言って
もいいでしょう。私が今回のコラムで取り上げた「お金は
なくてはならないもの」という考えも、お金に対する恐れや
不安にもとづいており、健さんの言うunhappy moneyの流れ
を生み出す主な原因となっているものです。この考えを無批判
的に受け入れていると、お金に必要以上の力を与えてしまう
ことになります。

お金の支配から自由になり、お金と健全な関係を築くためにも
本書が提案するように、まずはお金のEQを高め、happy
moneyの流れを生み出していくことが必要になるのでは
ないでしょうか。

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4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

先月、私は思うところあって1ヶ月ほどアフリカ南部へ一人旅に
出かけてきました。具体的には、南アフリカ・ナミビア・ボツワナ
・ジンバブエ・サンビアの5ヶ国です。この辺りを訪れるのは
生まれて初めてのことで、特にナミブ砂漠の雄大さ、オカバンゴ・
デルタの広大さ、そしてビクトリアの滝の壮大さには心を大きく
揺さぶられました。

私たちはこの地球という星の上で日々忙しく生きていますが、
そこがいかに美しく、変化に富み、息を呑むほど素晴らしい場所
であるかということについてはあまり意識していません。せっかく
この星で生きるという奇跡に恵まれたのに、それを存分に味わう
ことなく人生を終えるのはもったいないとつくづく感じると同時に、
その美しさ、素晴らしさを味わえば味わうほど、それを未来の世代
にもしっかりと遺していかなければならないという想いも強く
湧いてきました。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

2019年12月20日金曜日

よく生きる通信 Vol.36 「人生の流れに身を任せる」

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

       ★よく生きる通信 vol.36★
          2019年12月号

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

おかげさまで、本日12月19日をもちましてよく生きる研究所
も無事8年目を迎えることができました。これもひとえに皆様
からいただいたご支援の賜物と心から感謝しております。

8年目となる来年も相変わらず「アジア・シフト」が続きそう
ですが、引き続き今後ともご指導・ご鞭撻をいただけますよう、
どうぞよろしくお願いいたします。

では、今年最後の「よく生きる通信」をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「人生の流れに身を任せる」
2.よく生きるインフォメーション:
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 3/21-22
・本当の自分を生きる塾 (オンライン) 4/8-7/22
3.よく生きるリソース:「サレンダー」
マイケル・シンガー著(風雲舎)
4.編集後記

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

1.よく生きるコラム 「人生の流れに身を任せる」

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

直近2回のメルマガで「プロセス志向型の生き方」について
書いてきましたが、今回もそうした生き方をする上で欠かせない
と私が感じていること、すなわち「人生の流れに身を任せる」
ということについて書かせていただきたいと思います。

プロセス型の生き方の対極にあるのが「結果志向型の生き方」
になるわけですが、これは最初に自分が思い描いた理想的な
未来を実現するために計画を立て、それに自らを従わせよう
とする生き方です。それは往々にして未知なるものに対する
恐れにもとづいており、描かれる未来も勢い自分の過去の経験
から想像できる範囲、そして自分が許容できる範囲にとどまり
がちです。

一方、プロセス型の生き方は、未来をコントロールしようと
すること自体を手放すことから始まります。そして、自分と
いう存在を通じて起ころうとしている未来に意識を向けます。
そうやってコントロールするのをやめてみて、ただただ自分の
人生に起こっていることを客観的に眺めてみると、そこには
流れのようなものがあることに気づくことがあります。

私の場合、5年ほど前から何の予兆もなく突然「中国」という
流れがやってきました。そして、ほぼ時を同じくして、これ
またそれまでまったく考えてもいなかった「天職創造セミナー
を提供できるトレーナーを養成する」という流れがやって
きました。その両方にとりあえず乗ってみた結果、今では
それらの流れが合流し、中国をはじめとしたアジア各国で
天職創造セミナーのトレーナー養成を行うことが自分の活動
の中心になっています。これは5年前には自分でもまったく
想像もしていなかった展開でした。

このように、人生の中である流れに気づいても、まさに川岸
に座って川の流れを眺めている時と同じく、その流れが
どちらの方向に向かっているかは見えますが、その流れが
最終的にどこに行き着くのかまでは見えません。このように
先が見えない不安から、たとえ流れに気づいても多くの人は
その流れに乗ることを躊躇してしまうのです。時には、流れに
逆らって上流に向かって泳ぐようなことをしてしまう場合も
あるかもしれませんね。

ただ、想像していただくとすぐわかるように、こうして流れに
抵抗したり、逆行したりするのは相当にエネルギーを消耗
します。そこで、同じエネルギーを使うのであれば、その流れ
にまずは乗ってみて、その上でそこから自分ですら想像し
得なかったような未来を創ることにエネルギーを使った方が
よほど効率的だという考え方もあり得ると思うのです。

「人生の流れに身を任せる」と聞くと、何だか消極的かつ
受動的な印象を持たれるかもしれませんが、それは未知に
対する恐れから未来をコントロールすることを手放し、どこに
行き着くかわからない流れにあえて乗るという積極的かつ
能動的な行為だと私は考えます。そして、この「どこに行き
着くかわからない」ということ自体が、まさに人生に面白さと
新鮮味をもたらす鍵だと私は思うのです。

ぜひ考えてみていただきたいのですが、もしも最初からどこに
行き着くかがわかっているとしたら、はたして人生は面白いで
しょうか?もちろん、これはその人の人生観によるので何が
正しいということではないと思いますが、予め行き先を
決めて、あたかもそこに行き着けるかどうかが人生の良し悪し
を決めるかのように考えるのは、かえって自ら人生の可能性を
狭めてしまっているような気がするのですが、皆さんはどう
思われますか?
(榎本英剛)

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

2.よく生きるインフォメーション

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>

・天職創造セミナー(神奈川・藤野)3/21(土)-22(日)
https://kokucheese.com/event/index/586950/

・本当の自分を生きる塾(オンライン)4/8(水)-7/22(水)
 https://kokucheese.com/event/index/586951/

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

3.よく生きるリソース 「サレンダー」 
マイケル・シンガー著 (風雲舎)

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

本書のタイトルである「サレンダー」というのは英語で書くと
“surrender”となり、日本語で「身を任せる」という意味の
言葉です。つまり、今回のコラムで取り上げた「人生の流れに
身を任せる」を英語で言うと“surrender to the flow of
life”となります。本書の内容もまさにこの「人生の流れに身を
任せる」ことがテーマとなっています。

本書の面白いところは、著者のマイケル・シンガー氏が「もし
流れに徹底的に身を任せて生きたら、人生はどうなるだろうか」
ということを自らの人生で実験した自伝的な報告になっている
ところです。ちなみに、原書のタイトルは“The Surrender
Experiment” となっており、まさに「流れに身を任せる」
ことをテーマに据えた、一人の男による壮大な実験について
書かれています。物語調で書かれているので非常に読み
やすく、一般の人から見れば常軌を逸しているように見える
その徹底した任せぶりにハラハラしながらもグイグイと引き
込まれていく感じがするはずです。

著者はヒッピーな大学院生だった20代半ばに覚醒体験をして
以来、瞑想やヨガにのめり込み、森の中で暮らすようになり
ます。しかし、人生の流れは彼が単なる隠遁者でいることを
許さず、まずは彼が暮らしていた森の中にスピリチャル・
コミュニティをつくることになり、次にひょんなことから建設
業者となり、さらに医療用ソフトウエアを開発する会社を立ち
上げ、ついにはその会社が従業員2000人を抱える巨大なIT
企業に成長し、その最高経営責任者を務めることになります。

このような激動の人生を送った著者ですが、その何一つとして
彼自身が計画したものではなく、ただ人生の流れに身を任せる
ということをひたすらやり続けた結果起きたことだったという
のが肝心なところなのです。もう1つ大事なことは、彼が
これらの「結果」にこだわっていなかったということです。
彼にとって大事だったのは、人生の流れに身を任せることで、
「こうでなくてはならない」というエゴから自らを解放し、
真の平和を内側に築くことだったのです。

私もこの20年強、意識的に流れに身を任せて生きてきたつもり
ですが、本書を読んで著者の規格外な任せぶりに感嘆する
とともに、まだある可能性の余地を垣間見せてもらった感じ
がして、大いなる刺激を受けた次第です。

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

4.編集後記

◇◆◇◆◇―――――――――――――――――◇◆◇◆◇

今年10月に東日本を襲った超大型台風19号は、私が住む
神奈川県・藤野にも甚大な被害をもたらしました。多数の
土砂崩れが発生し、一時はすべての道路および線路が封鎖
されて陸の孤島と化し、死者も出るなど、これまで経験した
ことのない事態に直面しました。

これまで「何があっても大丈夫なまちをつくる」ことを
目指してトランジション・タウンの活動をしてきた身
としては、かなりの衝撃を受けましたが、今はこの経験を
教訓として再び立ち上がるべく、地元の仲間たちと何が
できるか模索しているところです。

来年はアジアでの活動に加え、こうした地元での活動にも
少し意識を向けていけたらと思っています。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)

2019年10月23日水曜日

よく生きる通信 vol.35 「人生のプロトタイピング」

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         ★よく生きる通信 vol.35★
          2019年10月号
◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

皆さん、こんにちは。
よく生きる研究所の榎本英剛です。

ここに来て、だいぶ秋らしくなってきましたが、皆さんはいかが
お過ごしでしょうか?

私は昔から腰が弱く、よく季節の変わり目にぎっくり腰になるの
ですが、ここのところ2回立て続けにやってしまい、難儀して
いるところです。皆さんもどうぞお気をつけください。

さて、約3ヶ月ぶりとなる「よく生きる通信」をお届けします。
ぜひお目通しください♪

★今号のContents★

1.よく生きるコラム:「人生のプロトタイピング」
2.よく生きるインフォメーション:
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 10/22-2/4
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 10/23-2/5
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 11/3-4
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 12/21-22
3.よく生きるリソース:「ライフデザイン~スタンフォード式 
最高の人生設計」バーネット&エヴァンス著(早川書房)
4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

1.よく生きるコラム 「人生のプロトタイピング」

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

「プロトタイピング」という言葉、皆さんはご存知でしょうか?
日本語で言うと「試作品をつくる」というような意味になります
が、最近この言葉をいわゆる「ものづくり」以外の分野でもよく
耳にするようになりました。今回のコラムでは、このプロトタイ
ピングを私たちの人生に応用することの重要性について取り上げ
たいと思います。

ちなみに、このプロトタイピングは、従来の問題解決手法に対する
アンチテーゼとして注目を浴びる「デザイン思考」や「U理論」
においても、その主要な要素として取り上げられています。私自身、
以前からデザイン思考やU理論には何か惹きつけられるものを
感じていましたが、それはなぜなのかを考えてみると、両者ともに
前号で取り上げた「プロセス志向型の未来の創り方」を提示して
いるからだということに気づきました。そして、両者がともに
プロトタイピングを主要な要素として取り上げているということは、
すなわちプロトタイピングがプロセス志向型の未来の創り方に
おいて1つの鍵を握っているということではないかと思うのです。

少しおさらいをすると、未来を創る時に多くの人が採用するのは
「結果志向型」であり、最初にまずビジョンや目標を明確に設定し、
そこに最短距離で到達するための戦略や計画を立て、それを着実に
遂行していくというやり方です。一方、「プロセス志向型」は今
自分の内外で何が起きているのかに焦点を当て、その中に立ち
現われようとしている未来の芽を感じ取り、その芽が自然に芽吹き、
成長し、やがて実を結べるよう手を貸していくというやり方だと
前号のコラムで説明しました。

しかし、自分がその時感じていることがどのような未来の芽なのか
を明確に知ることはできません。せいぜい「こういうことなのでは
ないか」という仮説を立てることくらいしかできないでしょう。
それが仮説である以上、何らかの形で検証しなければなりません。
そして、検証というのは頭の中だけで行うことはできず、実際に
手足を動かして形にしてみる必要があります。これがプロトタイ
ピングです。そして、プロトタイピングを行う時の原則は「小さく
始める」ことです。つまり、それほどコストやエネルギーがかか
らず、リスクも高くない形で自分の仮説を検証してみるのです。

このことを人生に応用してみると、たとえばこんな感じになります。
海外留学をしたいと思うのだが、いきなり会社を辞めて留学する前
に、留学経験者の話を聞くとか、留学先として考えている大学を
実際に訪れ、授業を体験してみるといったことです。これは私が
かつて実際にやったことですが、これらのプロトタイピングを通し
て、徐々に留学するという自分の決意が固まっていきました。
しかし、多くの人は会社を辞めて海外留学するということを考えた
だけで、そこにかかるコストやリスクばかりに意識が行って、何の
行動も起こさずにその想いに蓋をしてしまったりします。これは
大変もったいないことだと思います。

人生を1つのアートと見た時に、最初からその完成形を明確に
描いてから取り組む、つまり「考えてから創る」という結果志向型
の創作方法もありますが、自分も人生を取り巻く環境もどんどん
変わっていくということを前提にした場合、それはむしろ不自然で
リスクが高い方法であると言えます。むしろ、その変化を材料
として使いながら、プロトタイピングを通して「創りながら考える」
というプロセス志向型の創作方法の方が自然でリスクが低いという
考え方もできると思うのですが、皆さんはどう思われますか?
(榎本英剛)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

2.よく生きるインフォメーション

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<<よく生きる研究所主催もしくは共催イベント>>
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 10/22(火)-2/4(火)
 https://kokucheese.com/event/index/569824/
・本当の自分を生きる塾(オンライン) 10/23(水)-2/5(水)
 https://kokucheese.com/event/index/576850/
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 11/3(日)-4(月・祝)*
 https://kokucheese.com/event/index/573402/
・天職創造セミナー(神奈川・藤野) 12/21(土)-22日(日)*
https://kokucheese.com/event/index/569808/
 
*これらのプログラムは現在定員に達しておりますが、今後
キャンセルが出る可能性もありますので、参加ご希望の方は
以下のメールアドレスまでキャンセル待ちのご登録をお願い
いたします。
info@yokuikiru.jp

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

3.よく生きるリソース 「ライフデザイン~スタンフォード式 
最高の人生設計」ビル・バーネット&デイヴ・エヴァンス著 
(早川書房)

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

著者の2人はスタンフォード大学でデザイン思考にもとづいた
ライフデザインについて教えている同僚で、ライフデザイン・ラボ
の共同創設者でもあります。本書のことは、現在中国で私が開催
している「天職創造トレーニング・プログラム」に参加している
人たちから「この本に書かれていることと、あなたが私たちに
教えてくれていることはとても似ているので、ぜひ読んでみて
ほしい」と言われて知りました。

日本語版が出ていることを知らず、原書(Designing Your Life)
をさっそく取り寄せて読んだのですが、彼らが言った通り、その
内容はとても共感を覚えるものでした。ここでは、特に共感を
覚えた点を3つ挙げたいと思います。まず1点目は、実際にライフ
デザインのプロセスを始めるにあたって、自分が仕事や人生を
どう観ているかを確認する必要があると主張していることです。
このことは私が強調してもし切れないくらい大事だと思っている
ことで、拙著『本当の仕事』『本当の自分を生きる』においても
中心的なテーマとなっています。

2点目は、ライフデザインのプロセスにおいて、他者の協力を得る
ことの重要性について語っていることです。ともすると、自分の
仕事や人生に関することは独力で切り開かなければならないと
思い込み、他者に協力を仰ぐことなど思いつきもしないという人
が世の中多いと思います。しかし、デザインというのはなるべく
多くの人が関わった方が一般的にそのクオリティが高くなると
いうデザイン思考の考え方にもとづき、著者らは積極的に他者を
自らのライフデザインのプロセスに巻き込むことを薦めています。

最後の3点目は、今回のコラムでも取り上げたプロトタイピングの
重要性について強調している点です。デザイン思考そのものが
「考えてから創る」より「創りながら考える」ことを重視して
おり、それはものづくりだけでなくライフデザインでも同様だと
著者たちは言います。特に、具体的なプロトタイピングの方法
として、自分が興味のある分野ですでに仕事をしている人たちに
インタビューすることを薦めていることが「小さく始める」上で
理に適っていると感じました。

プロセス志向で未来を創ることに関心のある方にはぜひ読んで
いただきたい1冊です。

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

4.編集後記

◇◆◇◆◇――――――――――――――――――――◇◆◇◆◇

明日から、韓国では初めての開催となる「天職創造トレーニング・
プログラム」という約半年間のプログラムがスタートします。実は、
最近何件かキャンセルがあり、最少催行人数を割ってしまったの
ですが、予定通り催行することに決めました。というのも、ご存知
のように現在、韓国と日本の政治的な関係は危機的な状況にあり
ますが、そういう時だからこそこのプログラムを実施する必要が
あると強く思ったからです。それをやったからといってどうなる
わけではないかもしれませんが、これも1つのプロトタイピング
だと思って、自分ができることをやってきたいと思います。

(発行責任者: よく生きる研究所 榎本 英剛)